火災保険を一度使うとどうなるのか?知らないと損する保険の仕組み!

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火災保険を一度使うとどうなるのか?知らないと損する保険の仕組み!

火災保険は、火災や自然災害などの事故による、住宅や家財の損害を補償してくれる保険です。
昨今では、自然災害が激甚化していることもあり、必ず加入を検討したい保険です。

火災保険を一度使うと、二度目以降は使えなくなるの?

更新時に保険料が上がってしまうの?

しかし、「火災保険を一度使うと、二度目以降は使えなくなるのではないか」「保険料が上がってしまうのでは?」と不安に感じる方も少なくありません。

この記事では、火災保険を一度使うとどうなるのか、保険料への影響はあるのかについて詳しく解説します。

火災保険とは?

火災保険は、住宅や家財に対する損害を補償する保険で、火災だけでなく、風災や水災、盗難など様々なリスクにも対応しています。
住宅を守るために欠かせない保険で、住宅に関わるすべての方が加入すべき保険になります。

火災保険に加入すべき方

  • 戸建住宅やマンションを所有されている方
  • 賃貸アパートや賃貸マンションのオーナー
  • 賃貸アパートや賃貸マンションを借りている方
  • 企業で事務所や工場を所有されている方

住宅ローンを組んでいる方には銀行から加入が求められていることもあります。

補償対象は「建物」と「家財」

火災保険の補償対象は大きく分けて「建物」と「家財」の二つに分類されます。
「建物」とは、住宅そのものや門、塀、物置などの付帯設備も含まれます。
「家財」は家具や電化製品、衣類など、家の中にある物品を指します。
契約者はこの2つの中から、必要に応じてどちらを補償対象にするかを選んで加入します。

全損した場合、火災保険契約は終了する

火災保険は、建物や家財が全損とならない限り、保険を何度使用しても契約が終了することはありません
しかし、全損となった場合には契約が終了してしまいます

全損の事例

  • 建物が火災により全焼した
  • 建物および家財が竜巻により全壊した

全損とは?

全損とは、火災や自然災害などで建物や家財が破損し、補償対象の損害額が契約している保険金額の80%以上に達した場合を指します。
保険金額の全額が保険金として支払われた場合、その損害が発生した時点で契約は「終了」します

保険期間が残っていたとしても、全損と判断された場合、契約は終了となり、再び火災保険に加入する必要があります。

保険金額の80%以上となり、全損と判断された事例

保険金額 2,000万円
損害額  1,600万円(80%に相当)
保険金  2,000万円(全損となり契約は終了)

台風による損害で建物が大破し、損害額が1,600万円に達したとします。
この場合、1,600万円は契約保険金額の80%(2,000万円の80%=1,600万円)に該当するため、全損と判断され、保険契約は終了します。
この時、保険金として2,000万円が支払われますが、契約はその時点で終了します。

地震保険などの補償や特約も同時に終了する

火災保険の契約が終了すると、地震保険や個人賠償責任補償特約などの特約も同時に終了してしまいます。

例えば、火災保険に個人賠償責任補償特約を付けて自転車事故に備えていた場合でも、火災保険金全額が支払われた時点で特約を含めた火災保険契約が終了するので、新たな補償を準備するなど注意が必要です。

全損による契約終了後の対応

全損によって火災保険が終了した場合、補償を準備するためには、新たに火災保険に加入する必要があります。
再契約時には、その時点での火災保険料が設定されます。近年の火災保険は値上げ傾向であるため、当時加入した際の保険料より値上げになっていることが多いです。

全損した場合、地震保険も終了する

地震保険では、全損の定義が火災保険と異なります。
地震保険でも、火災保険同様に、全損となると地震保険契約は終了します。

地震保険の全損

建物 主要構造部の損害の額が 建物に時価額の50%以上
家財 家財の損害額が 家財の時価額の80%以上

出典 地震保険基準料率 損害保険料率算出機構

地震保険とのセット契約の重要性

日本は地震大国であり、火災保険だけでは地震による損害をカバーできないため、地震保険の加入が推奨されています。地震保険は火災保険とセットでしか加入できないため、火災保険の契約が終了した場合、地震保険も同時に失効します。地震保険に加入していれば、地震による損壊も補償されるため、地震に備える意味でも火災保険とのセット契約が重要です。

全損で契約が終了した場合、保険料は戻るのか

全損によって火災保険契約が終了した場合、未経過分の保険料が返金されることがあります
契約期間が残っているにもかかわらず、全損により契約が途中で終了したため、保険会社が保険料の未経過分を返還されます。

保険期間 5年間
全損による契約の終了 2年目(残り期間 3年間)

例えば、5年間の火災保険契約に加入していて、契約開始から2年目で全損が発生して契約が終了した場合、残りの3年間分の保険料が未経過分となります。
この3年間分の未経過保険料が、返金される可能性があります。

保険会社や保険商品によって返還される場合と、返還されない場合がありますので、保険会社や保険代理店に確認してみましょう。

火災保険の申請回数に制限はあるのか?

火災保険は全損を除いて、損害が認められれば何度でも使用することが可能です。
また一度火災保険を使用すると、補償限度額が減っていくという誤解を抱きがちです。

火災保険は全損にならなければ何度でも使用できるんですか?

一度火災保険使ったら保険金額が減るんですか?

火災保険を使用しても補償される金額は自動で復元する

火災保険には「保険金額自動復元方式」という仕組みがあり、これは保険期間中に保険金を受け取った場合でも、全損でない限りは、補償される金額(保険金額)が自動的に元に戻る制度です。
つまり、一度火災保険を使っても、次回何らかの損害を受けた際には、契約時と同じ条件で補償を受けられるということです。また補償される金額(保険金額)が復元されても、追加の保険料は発生しません。

保険金額自動復元方式の具体例

保険金額 2,000万円
損害額  500万円(25%に相当)
保険金  500万円(保険金額自動復元方式により、その後も2,000万円を上限に補償

例えば、建物に対して2,000万円の火災保険に加入していたとします。
台風で屋根が損傷し、500万円の保険金を受け取った場合、保険金額が2,000万円から1,500万円に減額されることはありません。

次に別の台風で屋根が損傷しても、2,000万円を上限に補償が受けることができます。

申請ができるケース

  • 別の箇所が損害を受けた場合
    1回目に外壁が壊れて保険金を受け取った後、別の事故で屋根が破損した場合も再度保険金を請求できます。
  • 修理済みの箇所が再度損害を受けた場合
    一度保険金で修理した箇所が再度損傷した場合でも、修理した証明書があれば、再度保険金を請求できます。

申請ができないケース

  • 修理を行わなかった場合
    1回目に受け取った保険金で修理を行わなかった箇所が再度損害を受けた場合、同じ箇所への再申請は認められません。必ず受け取った保険金で修理を行うことが重要です。
  • 故意による損害や過失による損害
    故意に損害を発生させた場合や、重大な過失で損害が発生した場合は、保険金は支払われません。

火災保険を使うと保険料は上がるのか?

火災保険を使用しても保険料は上がらない

火災保険を使った場合でも、更新後の保険料が上がることはありません
自動車保険では、事故を起こすと等級が下がり保険料が上がることがありますが、火災保険にはそのような等級制度がないため、保険金請求後も保険料に変動はありません。

火災保険全体の保険料が上がることも

ただし、大規模な自然災害が起こった後は、地域全体の災害リスクが高くなるため、契約者個別ではなく、火災保険全体の保険料が値上がりすることがあります。
これは、保険会社が支払う保険金が増えるため、将来のリスクを見越して保険料を上げる必要があるからです。
例えば下記のような災害では、保険料の値上げに影響しています。

火災保険料が値上げとなった災害

主な災害支払保険金(火災保険)
2019年 台風19号(令和元年東日本台風)4,751億円
2019年 台風15号(令和元年房総半島台風)4,244億円
2018年 台風24号2,856億円
2018年 台風21号9,202億円
2018年 西日本豪雨1,520億円
出典 損害保険料率算出機構

火災保険の申請ができないケース

火災保険は基本的に何度でも申請できる保険ですが、いくつかのケースでは申請が通らないこともあります。
以下にその代表的な事例を紹介します。

修理していない箇所の再申請

一度保険金を受け取ったにもかかわらず、修理を行わなかった箇所が再度損害を受けた場合、火災保険の再申請はできません。これは、同じ箇所に対する重複申請が認められないためです。修理を行わずに放置してしまうと、次に被害が発生した時に保険金が支払われないリスクがあるため、必ず修理を行うようにしましょう。

故意による損害

火災保険は、偶然の事故や自然災害による損害を補償するものです。
故意に損害を発生させた場合や、虚偽の申請を行った場合は、保険金の支払いが拒否されるだけでなく、詐欺行為として法的措置が取られることもあります。

経年劣化による損害

火災保険は、建物の経年劣化による損害は補償の対象外です。
例えば、長年使用してきた屋根の老朽化や、外壁のひび割れなどは自然災害によるものではなく、経年劣化と見なされるため、補償の対象とはなりません。
定期的に建物をメンテナンスし、経年劣化を防ぐことが重要です。

火災保険金請求の申請手順

火災保険金請求の手順をご紹介します。

STEP
警察、消防、救急への連絡

火災や爆発が発生した場合は、速やかに119番で消防へ連絡し、火災や事故の場所と状況を伝えます。
けが人がいる場合は、119番で救急車を呼びます。
けがの程度や意識の有無を伝え、必要な応急処置を行いながら救急隊の到着を待ちます。

STEP
保険会社に事故発生の連絡

・ご契約者のお名前
・ご契約の保険証券番号
・事故発生の日時
・事故発生の場所
・事故の原因
・事故の状況・損害の程度
・届出官公署名・担当者名
・修理先(業者名称・電話番号)
・隣家を類焼させた場合は相手方のお名前、事故原因が第三者である場合は求償の可否
・他のお支払いできる保険のご契約の有無
・事故後のご連絡先

STEP
保険会社との打ち合わせ

保険金のお支払いに向け、損害状況や事故状況の確認をおこないます。
場合によっては、保険会社の調査員が現地まで出向き、損害の状況を確認します。

STEP
保険金請求資料の作成・提出

小さな損害であれば、保険金請求書・修理見積書・罹災物件写真の3点で保険金請求手続きを行うことがかのうです。

火災など大きな損害の場合には、下記資料が必要となることもあります。

・保険金請求書
・修理見積書
・罹災物件写真
・建物の復旧に関する確認書
・住民票
・印鑑証明書
・建物登記簿謄本
・保険金直接支払指図書
・支払先確認書
・事故届出書

STEP
保険金請求内容の確認・承認

お支払いする保険金の内容を確認します。

STEP
保険金の受取り

保険金が指定の金融機関口座に振込されます。
保険金の支払いまでには、申請から30日ほどかかることもあります。


火災保険を効果的に利用するためのポイント

火災保険は、契約内容にあてはまれば何度でも利用できる便利な保険です。
しかし、効果的に利用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

定期的な保険見直し

火災保険は、補償内容が時代に合わせて変わることがあります。
特に、近年では自然災害のリスクが高まっているため、保険の補償内容を定期的に見直すことが重要です。
適切な補償を受けるために、保険料や補償内容を比較することをおすすめします。

補償範囲の確認

加入している火災保険の補償範囲をしっかりと把握しておくことが大切です。
特に、水災補償や地震保険など、オプションとして追加する補償がある場合、必要に応じて加入するかどうかを検討しましょう。

トラブル時は早めの申請

火災や自然災害による損害が発生した場合は、できるだけ早めに保険金の申請を行うことが大切です。
保険金請求の時効は3年となっているため、申請が遅れると補償が受けられなくなる可能性があります。

火災保険を一度使うとどうなるのか? よくある質問

火災保険を一度使うとどうなるのでしょうか?契約は終了してしまいますか?

火災保険を一度使っても契約がすぐに終了するわけではありません。
ただし、全損などで保険金が契約金額の80%以上支払われた場合は、契約が終了します。

火災保険を一度使うと、翌年の保険料は上がりますか?

火災保険は自動車保険とは異なり、一度使ったからといって保険料が上がることはありません。
ただし、地域全体のリスク増加などで保険料が更新時に上がる可能性はあります。

火災保険を一度使って全損扱いになった場合、次の保険契約はどうなりますか?

全損で火災保険契約が終了した場合は、新しい住まいに対して再び保険契約を結ぶ必要があります。
契約内容や保険料は再計算されるため、保険会社や保険代理店に相談しましょう。

火災保険を一度使うと、他の損害が発生した時にも補償を受けられますか?

はい、火災保険は一度使っても補償金額が自動的に復元されるため、契約期間内であれば何度でも補償を受けることができます。
ただし、同じ箇所を修理しなかった場合、再度の申請はできません。

火災保険を一度使うと、地震保険にも影響がありますか?

火災保険と地震保険はセットで契約されていますが、火災保険を使っても地震保険自体に影響はありません。ただし、火災保険が全損で終了した場合、地震保険も同時に終了します。

火災保険を一度使うとどうなるのか? まとめ

火災保険は、損害が発生した場合に安心して利用できる保険です。
基本的に申請回数に制限はなく、何度でも利用可能です。また、保険を利用したからといって保険料が上がることはなく、安心して補償を受けることができます。

ただし、全損になった場合には契約が終了するため、新たな火災保険を契約する必要もあります。

火災保険をうまく活用することで、大切な住まいをしっかりと守り、いざという時にも安心して生活を続けられるよう備えておきましょう。

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