築50年以上の築古物件は火災保険に入れない?賢い保険の選び方とは

建物を所有すると、一般的に火災保険に加入します。
しかし、築50年以上のような古い建物(築古物件)は、耐火性や耐風性が劣っているため、火災保険の必要性を特に強く感じることが多いでしょう。

築古物件とは、築50年以上など、建築から長い年月が経過した物件のことを指します。
これらの物件は、火災など損害が生じるリスクが高く、被害額も大きくなる可能性があるため、保険会社が慎重に対応する傾向があります。

そのため、築古物件では火災保険の契約が断られたり、保険料が高額になったりするケースが少なくありません。

この記事では、築50年以上の物件が火災保険に加入しづらい理由と、少しでも安く火災保険に加入するための方法について紹介します。

目次

築50年以上でも火災保険に加入できるのか?

築50年以上の築古物件でも火災保険への加入は可能です。
ただし、物件の状態によっては、契約が断られたり、保険料が高くなったりすることがあります。
特に、老朽化が進むと火災リスクが増すため、保険会社が慎重な判断を行う傾向が強まります。

築年数別料率の採用

また、2024年10月から火災保険の「築年数別料率」が変更され、これまでの5年ごとの料率改定が1年単位に変更されました。
この改定は、築年数が進むほど事故リスクが高まる現実を、保険料に迅速に反映させるためのものです。
この結果、築年数が古い物件ほど保険料が上昇することが予想されます。

火災保険 参考純率の引き上げ

加えて2023年6月に、損害保険料率算出機構は、火災保険参考純率を全国平均13%程度引き上げしました。
背景には、自然災害の頻発や資材・修理費の高騰が挙げられ、特に古い物件や水災リスクの高い地域での負担増が見込まれます。
また、水災リスクに応じた地域別の保険料率も導入され、水災のリスクが低い地域では保険料が抑えられる一方で、リスクが高い地域では保険料が最大で1.2倍になることがあります。

このように、築50年以上などの築古物件の火災保険加入においては、保険料の増加や契約条件が厳しくなる傾向が続いています。物件の状態や地域リスクを十分に考慮し、保険を見直すことが重要です。

築50年以上など築古物件に対する各保険会社の対応

各損害保険会社では築40年や築50年以上、築年数不明、空き家の物件に対し、加入条件を厳しくする運用方法に変更しています。

このような審査の厳格化の背景には、古い物件が詐欺のターゲットとなりやすいことが挙げられます。
老朽化した住宅では、新しい損害と過去の損害の区別が難しくなり、保険金の不正請求が増加するリスクが高まるためです。
これにより、他の契約者の保険料が上昇する可能性があるため、保険会社は築古物件に対して慎重な対応を取っています。

保険会社ごとの具体的対応

A社の対応
築50年以上の築古物件に対し、保険代理店を通じて物件の状態を写真で確認したうえで、契約条件を決めるように運用を改めています。例えば、住宅の経年劣化が進んでいる場合、免責金額(自己負担額)の引き上げや、特約の追加が制限されることがあります。

B社の対応
築40年以上の物件に対し、保険会社は物件の状態を詳細に確認するため、建物の四方(4方向)からの写真提出を必須としています。

増改築などのリフォームやフルリノベーションをしている場合でも、建築年月が築古物件の場合は、補償を制限される可能性あります。

築50年以上の火災保険の現状

築50年以上などの築古物件に対する火災保険の加入は、年々厳しくなってきています。
その背景には、保険会社の収支悪化が挙げられます。特に近年では、自然災害の増加や建物の老朽化による損害が大きな負担となっています。

自然災害による支払保険金の増加

2023年6月、金融庁が発表した「保険モニタリタングレポート」によると、火災保険は損害保険会社の正味収入保険料の約20%を占めていますが、それでも火災保険の保険引受利益は過去10年にわたってマイナスが続いています。
これは、台風や豪雨、豪雪といった自然災害の頻度が増加し、それに伴い保険金支払いが増加しているためです​。

金融庁 保険モニタリタングレポート 2023年6月

給排水設備の老朽化に伴う水濡れ損害の増加

さらに、築古物件に特有のリスクも収支の悪化に影響しています。
古い建物では、給排水設備の老朽化が進んでおり、漏水による損害が増加傾向にあります。損害保険料率算出機構の「2023年度版火災保険・地震保険の概況」によれば、老朽化による水濡れ被害が増えており、これが保険金支払いの一因となっています。

損害保険料率算出機構 火災保険・地震保険の概況 2023年度版

こうした状況を踏まえ、火災保険料の算定基準が改定されつつあります。
2024年10月からは、従来の5年ごとの築年数別料率が1年刻みの料率に変更されました。
この変更は、築年数が進むにつれて増加するリスクを、より正確に保険料に反映させるためです。
築50年以上などの築古物件にとっては、さらに高い保険料が適用される可能性があります​。

築50年以上などの築古物件の保険料を抑えるポイント

築50年以上などの築古物件は、新築物件に比べて耐火性能や耐風性能が低いため、火災や自然災害による損害リスクが高くなります。
このため、火災保険の保険料が高くなる傾向があります。

それでも、火災や自然災害など万が一の事故に備えて、火災保険への加入を希望するケースは少なくないでしょう。特に築50年以上などの築古物件では、リスクが高まることから、保険の重要性が一層増すと言えます。

そこで、築古物件でも火災保険の保険料を抑えるためのポイントについて、次に解説します。

  • 長期契約をする
  • 保険料の支払を一括払にする
  • 補償範囲を見直す
  • 免責金額を設定する
  • 複数の保険会社に見積りを取る

長期契約をする

火災保険の保険期間は最長で5年ですが、保険料は1年契約よりも5年契約のほうが割安になる傾向があります。
例えば、1年契約と5年契約のいずれも月払いの場合、5年契約の方が毎月の支払額が少なくなることが一般的です。

しかし、築古物件の場合、5年などの長期契約ができない場合もあります。
築年数によっては、1年契約が限度となる保険会社もあり、長期契約を希望しても受け入れられないケースがあるため、契約時に5年契約が可能か確認しましょう。

保険料の支払を一括払にする

火災保険の保険料には、毎月支払う「月払い」と、1年分の保険料をまとめて支払う「一括払い」の2つの方法があります。
一般的には、一括払いの方が保険料が割安になる傾向があり、少しでも保険料を抑えたい場合にはこの方法を選ぶことが推奨されます​。

さらに、5年契約をして5年分の保険料を一括払いにすると、最もお得になるのが一般的です。
保険会社によっては、長期契約による割引率が高いため、まとめて支払うことで大幅な節約が可能です​。

ただし、一括払いでは一度に大きな金額を支払うことになるため、預貯金の管理には注意が必要です。
預貯金に余裕がある場合には、一括払いを選択することで、総支払額を抑えられるメリットがある一方、無理のない範囲で選択することが重要です。

補償範囲を見直す

火災保険は、火災による損害だけでなく、落雷、破裂・爆発、風・雹(ひょう)・雪災、水災、物体の飛来・衝突、給排水設備からの水漏れ、不測かつ突発的な事故など、さまざまなリスクに対応しています。
補償を外すことで保険料を抑えることが可能です。

特に、取り外しができる補償として代表的なのが「水災」と「不測かつ突発的な事故」です。

水災リスクの補償

水災とは、台風や豪雨、暴風雨による洪水や高潮、土砂崩れなどで建物や家財が損害を受けた場合に適用される補償です。河川が近くにない地域や、鉄筋コンクリート造りのマンションの高層階など、水災のリスクが低い場所に住んでいる場合、この補償を外すことで保険料を抑えられる可能性があります​。

ただし、水災リスクの有無を自己判断するのは危険です。
物件の所在する地域のハザードマップを活用し、水災リスクをしっかりと確認しましょう。ハザードマップは各市町村の窓口で配布されているほか、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」でも確認できます​。

不測かつ突発的な事故

不測かつ突発的な事故とは、例えば家具を動かしている際に壁や家具を破損させてしまった場合など、予期しない事故に対する補償です。
この補償は、ある程度自己注意でリスクを減らすことが可能なことと、損害額が比較的小さいことから、少しでも保険料を抑えたい場合は、取り外すことを検討する余地があります​。

免責金額を設定する

火災保険では、免責金額を設定することで保険料を抑えることができます。

免責金額とは

免責金額とは、事故が起きた際に保険会社が支払う保険金から差し引かれる自己負担額のこと

免責金額を大きく設定すればするほど、保険料が安くなる傾向があります。

ただし、免責金額を設定すると、事故が発生した際に受け取る保険金が減るため、十分に注意が必要です。
また、免責金額を設定することで、臨時費用保険金などの追加の保険金にも影響が出る場合があります。

臨時費用保険金の影響

臨時費用保険金は、火災や自然災害による損害が発生した際、引っ越しや生活用品の購入などの急な出費を補うために、損害保険金とは別に支払われる保険金です。

例)
臨時費用保険金が損害保険金の10%(最大100万円上限)
損害保険金 50万円

【免責金額 0円の場合】
損害保険金50万円 × 10% = 臨時費用保険金5万円
合計受取金額:55万円(損害保険金50万円 + 臨時費用保険金5万円)

しかし、免責金額が設定されている場合、次のように受け取れる保険金額が減ります。

【免責金額 5万円の場合】
損害保険金50万円 - 免責5万円 = 損害保険金45万円
損害保険金45万円 × 10% = 臨時費用保険金4.5万円
合計受取金額:49.5万円(損害保険金45万円 + 臨時費用保険金4.5万円)

このように、免責金額を設定すると、受け取れる保険金全体に影響が及ぶため、メリットとデメリットをよく考えたうえで決定することが大切です。

複数の保険会社に見積りを取る

火災保険の保険料は、損害保険料算出機構が算出した参考純率を基に、各損害保険会社が設定します。しかし、同じ物件であっても保険会社によって保険料が異なることがあります。これは、各保険会社が独自のデータやリスク評価に基づいて保険料を設定しているためです​。

少しでも保険料を抑えたいときは、複数の保険会社から見積りをとって比較・検討しましょう。

築50年以上の築古物件でも火災保険に入れない? よくある質問

築50年以上などの築古物件の火災保険に関する、よくある質問をまとめました。

築年数不詳の古民家ですが火災保険に加入できますか?

築年数は登記簿などで確認できますが、登記簿などでも確認が難しいときは保険会社や保険代理店に相談しましょう。

物件の状態にもよりますが、火災保険に加入できないか、加入できても免責額が高めに設定さる、保険料が高くなる、毎年更新するたびに保険会社の物件確認が必要などの条件が付く可能性もあります。

築40年以上の分譲マンションの購入を検討していますが、見積もりで提示された火災保険料が高すぎる気がします。

分譲マンションはM構造なので、火災保険料が安くなる傾向がある物件です。

しかし近年、築年数が古い物件は保険料が上昇している傾向があるため、一般的な相場よりも保険料が高くなることが考えられます。必ずしも不動産会社から紹介された保険会社の火災保険に加入する必要はないため、不安であれば複数の保険会社や保険代理店から比較してみると良いでしょう。

分譲マンションの場合、老朽化により自分の家の給排水設備から水が漏れて、下の階の部屋や家財、共用部分などに損害を与えてしまう可能性があります。火災保険に、個人賠償責任特約も付加することをおすすめします。

個人賠償責任特約とは、日常生活において、自身や自身の家族が偶然の事故で他人にケガをさせたり、モノを壊したりして法律上の損害賠償責任を負ったときの損害を補償する特約です。

ただし自動車保険や傷害保険など、その他の損害保険に付加されている可能性もあるため、補償が重複しないよう注意してください。

築古物件は地震保険に加入できますか?

築古物件は地震による倒壊リスクが高いため、火災保険同様、スムーズに加入できない可能性があります。

ただし、あくまでも最終的な判断は保険会社が行うため、自身で判断せず、保険会社や保険代理店に相談してみることをおすすめします。

どの保険会社からも加入を断られたらどうしたらよいでしょうか?

一部共済では、築年数による制約がないことがあります。
どの保険会社からも火災保険の加入を断られたときは火災共済も検討してみましょう。

ただし火災共済は補償金額を柔軟に決められないことや、地震共済の補償額が少ない点に注意が必要です。

築古の店舗兼住宅でも火災保険に加入できますか?

店舗兼住宅であっても火災保険に加入できますが、物件の状態によっては加入を断られる可能性もあります。また仮に加入できたとしても、店舗兼住宅の場合、自宅をどのような業務で利用するかによっても保険料が異なります。

一般的に店舗兼住宅は、住居専用よりも保険料が高くなる傾向があります。

築古物件で火災保険に加入するときに注意点はありますか?

築古物件を購入した後、資材価格や人件費の高騰により、万が一火災保険金が支払われても、実際の修理費用をまかなえない可能性があります。
その理由の一つに、火災保険の更新案内に記載されている保険金額が、建築費の変動を必ずしも反映していない点が挙げられます​。

火災保険を更新する際には、設定されている保険金額が適正かどうか必ず確認しましょう。
特に、保険金額は「再調達価格」と同じ金額に設定することが重要です。
再調達価格とは、同等の建物を再取得するために必要な金額を指し、現在の建築費用に基づいています。

例えば、40年前に2,000万円で購入した木造の築古物件であっても、現在では建築費の高騰により、再調達価格が3,000万円になることがあります。
この場合、再調達価格である3,000万円が火災保険の保険金額として適切な額となります。

もし当時の建築価格がわからない場合は、建物の構造(木造、鉄筋コンクリートなど)に応じた平均単価に延床面積を掛けて算出する方法もあります。
ただし、これを自分で計算するのは難しいため、保険会社や代理店に確認してもらうのが安心です。

また、築古物件をリフォームやリノベーションする際にも、火災保険の保険料や補償内容を見直す必要があります。
増改築によって建物の価値が変わるため、保険金額や補償範囲が適切であるか確認しましょう。

リフォームやリノベーションをおこなった際には、必ず保険会社や代理店に連絡し、必要に応じて契約内容を見直すことをおすすめします​

築50年以上の築古物件でも火災保険に入れない? まとめ

築古物件の火災保険におけるポイントをわかりやすく解説し、保険料を抑える方法や保険金額の確認方法について具体的に説明しました。

築古物件であっても、必ずしも火災保険に加入できないわけではありません。
ただし、保険会社にとってリスクの高い契約となるため、物件の状態次第では契約を断られたり、高額な保険料が提示される可能性があります。
これは、築古物件が新しい建物に比べて耐火性能や耐風性能が劣り、自然災害や事故による損害リスクが高いと見なされるためです。

保険料を抑えるための工夫

  • 長期契約をする
  • 保険料の支払を
  • 一括払にする
  • 補償範囲を見直す
  • 免責金額を設定する

築古物件に関する火災保険の選択肢や更新手続きは、複雑で迷うことも多いかと思います。
補償範囲の見直しや保険金額の適正化、複数の保険会社の比較など、最適な保険プランを選ぶためには専門的な知識が必要です。

弊社では、火災保険に関するご相談を無料で承っております。
築古物件に特有のリスクに対応した最適な保険プランのご提案や、保険料を抑えるためのアドバイスを行っています。また、リフォーム後の保険の見直しや再調達価格の設定など、具体的な対応もサポートいたします。

不安や疑問を解消し、安心して火災保険に加入できるように、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。
経験豊富な専門家が丁寧にサポートいたします。

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