マンション管理組合の保険とは?保険料を安くする7つの方法と相場・見直しの手順

監修横田 正則株式会社キューブコンサルティング 代表取締役/損害保険トータルプランナー・AFP
この記事は2026年10月時点の情報にもとづいています(最終更新:2026年10月21日)。
マンション管理組合が入る保険は、共用部分の火災保険(マンション総合保険)を中心に、施設賠償・個人賠償・役員賠償・地震保険を組み合わせたものです。契約者は管理組合で、保険料は管理費などから支払います。
保険料は、建物の情報や補償の付け方、保険会社によって大きく変わります。この記事では、管理組合の理事の方に向けて、入る保険の全体像、当社で扱った事故の傾向、保険料の相場と安くする7つの方法、見直しの手順を順番に説明します。
- 保険料は、補償を削らなくても7つの方法で下げられることがある(建物の情報・評価額・保険金額・補償内容・免責金額・5年契約・他社の見積もり)
- 管理組合の保険は「共用部分の火災保険+賠償の特約+地震保険」の組み合わせで考える
- 当社で扱ったマンションの事故は、半分以上が水漏れ。施設賠償・個人賠償・原因調査費用の備えが重要
- 同じ補償条件でも、保険会社によって5年分の保険料に1.2〜2.4倍の差が出た(当社の見積もり事例)
- 見直しは満期の6か月前から。保険の切り替えには総会の決議が必要
マンション管理組合が入る5つの保険
マンションは、各住戸の「専有部分」と、それ以外の「共用部分」に分かれます。専有部分は区分所有者が自分で火災保険に入り、共用部分は管理組合がまとめて保険に入ります。標準管理規約でも、区分所有者は管理組合が共用部分について火災保険・地震保険などの契約を結ぶことを承認すると定めています。
出典 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」第24条(令和7年改正)
| 保険・特約 | 何に備えるか | 例 |
|---|---|---|
| 共用部分の火災保険 | 共用部分の建物・設備の損害 | 火災、台風、給排水管からの水漏れ、破損 |
| 施設賠償責任 | 共用部分の不具合で他人に与えた損害 | 共用の配管から漏水し、住戸を濡らした |
| 個人賠償責任(包括) | 居住者が他人に与えた損害 | 住戸の洗濯機から漏水し、階下を濡らした |
| 役員賠償責任 | 管理組合や役員の業務に対する損害賠償請求 | 理事会の判断をめぐり、住民から訴えられた |
| 地震保険 | 地震・噴火・津波による損害 | 地震で建物が傾いた、外壁が大きく壊れた |
共用部分の火災保険(マンション総合保険)
管理組合の保険の中心です。火災・落雷・風災・水濡れ・盗難などの基本の補償に、水災や破損・汚損、電気的・機械的事故などを選んで付けます。事故のあとの片付けや原因調査にかかる費用を補償する特約もあります。
火災で周りの住戸や近隣に被害が出ても、失火責任法により、重大な過失がなければ法律上の賠償責任は生じません。そのため、被害を受けた方へ見舞金を支払う「失火見舞費用」の特約があり、1被災者あたり30万〜50万円程度が支払われます(保険会社によって違います)。
補償の中身や特約の種類は、マンション総合保険とはで詳しく解説しています。
管理組合向けの保険を取り扱う保険会社
マンション管理組合向けの保険を取り扱う保険会社は5社です。それぞれの会社から見積書を取り寄せるのは手間がかかるため、複数の保険会社を扱う代理店にまとめて依頼すると比べやすくなります。
| 保険会社 | 保険商品 |
|---|---|
| 東京海上日動 | マンション管理組合のための住まいの保険 |
| 三井住友海上 | GK すまいの保険(マンション管理組合用) |
| 損保ジャパン | マンション管理組合のための火災保険 マンション総合保険 |
| あいおいニッセイ同和損保 | すまいの火災保険(マンション管理組合用) |
| 日新火災 | マンション共用部分用火災保険 マンションドクター火災保険 |
施設賠償と個人賠償
マンションでいちばん多い事故は水漏れです。水が漏れた配管が共用部分なら施設賠償、住戸の中(専有部分)なら個人賠償で対応するのが基本です。どちらの配管かは、壁や床を開けて調べないと分からないことも多いため、原因調査の費用を補償する特約もあわせて確認します。
2026年1月には、外壁のひび割れなど共用部分の不具合から住戸に雨水が入った事件で、最高裁が管理組合を民法717条の「占有者」にあたると判断しました。共用部分の不具合による損害で、管理組合が賠償を求められる場面は増えると考えられます。
出典 最高裁判所第一小法廷 令和8年1月22日判決(令和6年(受)第385号)
判決の内容はマンション共用部の漏水で最高裁が初判断、補償の詳しい範囲は施設賠償責任補償の解説と個人賠償責任保険の解説で説明しています。
施設賠償と個人賠償は、保険会社によって特約の名前が違います。補償の内容はほぼ同じです。
| 保険会社 | 施設賠償にあたる特約 | 個人賠償(包括)にあたる特約 |
|---|---|---|
| 東京海上日動 | 建物管理賠償責任補償特約 | 個人賠償責任補償特約(包括契約用) |
| 三井住友海上 | マンション共用部分賠償(示談代行なし)特約 | マンション居住者包括賠償特約 |
| 損保ジャパン | 施設賠償責任特約 | 個人賠償責任特約包括契約に関する特約 |
| あいおいニッセイ同和損保 | マンション共用部分賠償(示談代行なし)特約 | マンション居住者包括賠償特約 |
| 日新火災海上 | 建物管理賠償責任補償特約 | 個人賠償責任総合補償特約(包括契約用) |
役員賠償
理事長や理事は、管理組合の業務として判断や手続きを行います。その判断をめぐって住民から損害賠償を求められたときに、賠償金や弁護士費用を補償するのが役員賠償の特約です。役員のなり手を確保するうえでも、付けておくと安心です。
地震保険
火災保険だけでは、地震による損害は補償されません。地震保険は火災保険にセットで付け、保険金額は火災保険の30〜50%の範囲で決めます。マンションの場合、1戸あたり5,000万円が上限です。
出典 総務省消防庁「防災・危機管理eカレッジ 地震保険」
保険金は修理費の実額ではなく、損害の程度(全損・大半損・小半損・一部損)に応じて保険金額の一定割合が支払われます。共用部分に地震保険を付けるかの考え方は、マンション総合保険でかける地震保険で解説しています。
損害の程度 | 支払われる保険金 |
|---|---|
全損 | 地震保険金額の100% |
大半損 | 地震保険金額の60% |
小半損 | 地震保険金額の30% |
一部損 | 地震保険金額の5% |
地震保険料は国の制度にもとづき、どの保険会社でも同じです。直近の保険料の改定は2022年10月で、全国平均では0.7%の引き下げでしたが、地域による差が大きく、マンションなどの建物(イ構造)では茨城県・埼玉県・徳島県・高知県で29.9%の引き上げ、大分県で38.1%の引き下げでした。2026年10月時点で、その後の改定はありません。
出典 損害保険料率算出機構「地震保険基準料率」(2021年6月届出、2022年10月以降の契約に適用)
火災保険に地震保険を付ける割合(付帯率)は年々上がっており、2025年度は全国で70.8%と、統計を取り始めてから最も高くなりました。
出典 損害保険料率算出機構 2026年8月25日公表
当社で扱った事故から見る管理組合のリスク
当社で扱った火災保険の事故の記録(2011年〜2026年10月)のうち、マンションの共用部分や住戸で起きた事故を見ると、水漏れ・漏水が全体の約57%を占めています。
出典 当社で扱った火災保険の事故の集計(事故状況の記載から分類)
| 項目 | 割合・金額 |
|---|---|
| 事故のうち水漏れ・漏水 | 約57% |
| 支払保険金の中央値 | 約31万円(水漏れに限ると約42万円) |
| 支払いがあった事故のうち100万円以上 | 約18% |
水漏れは、1件あたりの金額がほかの事故より大きくなりがちです。原因が共用部分か住戸かで使う保険が変わるため、施設賠償・個人賠償・原因調査費用の3つがそろっているかが、管理組合の保険を見るうえでいちばんのポイントです。
上の階の住戸から漏水し、下の住戸の天井とクロスが濡れた。原因調査で漏れた配管の位置を確かめてから、使う保険を決めた。
大雨の日に、エレベーターの付近に水が入り込んだ。原因の調査から保険の請求を進めた。
居住者が共用部分のバルコニーに私物を置き続け、修繕工事に支障が出た。紛争の費用を補償する特約が使えるか相談があった。
当社で扱った事例をもとに一般化した例です。補償されるかどうかは、契約の内容と保険会社の判断によります。
管理組合の保険料の決まり方と相場(見積もり事例)
管理組合の保険料は、建物の条件と補償の付け方で決まります。戸数や延床面積が同じでも、築年数や過去の事故の件数によって大きく変わります。
| 保険料に影響するもの | 内容 |
|---|---|
| 建物の条件 | 所在地、構造、築年数、延床面積、戸数 |
| 保険金額 | 建物の評価額のうち、どこまでを保険でまかなうか |
| 補償の範囲 | 水災・破損・電気的事故などを付けるか、賠償の金額 |
| 免責金額 | 1回の事故で管理組合が自己負担する金額 |
| 事故の件数 | 過去の事故の件数によって保険料が変わる商品がある |
| 契約期間 | 1〜5年。長期の契約は割安になる商品が多い |
当社がお見積もりした事例では、同じ補償条件でも、最も高い保険会社の保険料は最も安い保険会社の1.2〜2.4倍でした。規模や築年数の違う6件を紹介します。
| マンション | 築年数 | 最も安い見積もり | 最も高い見積もり | 最高÷最安 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都・12戸 | 築45年 | 686,460円 | 1,655,340円 | 2.4倍 |
| 東京都・23戸 | 築30年 | 1,941,610円 | 3,106,870円 | 1.6倍 |
| 東京都・30戸 | 築15年 | 1,486,620円 | 2,507,970円 | 1.7倍 |
| 千葉県・63戸 | 築42年 | 1,770,150円 | 2,838,720円 | 1.6倍 |
| 大阪府・177戸 | 築25年 | 7,867,780円 | 12,568,290円 | 1.6倍 |
| 東京都・336戸 | 築23年 | 11,782,670円 | 15,678,970円 | 1.3倍 |
同じ規模でも、築年数や地域、過去の事故の件数、補償の付け方によって保険料は大きく変わります。ほかの事例はマンション総合保険の見直し(見積もり事例)でご覧いただけます。
保険料が上がり続けている理由は、マンション総合保険の値上げの理由と対策でまとめています。
マンション管理組合の保険料を安くする7つの方法
保険料が上がると、補償を外すことに目が向きがちです。ただ、補償を外す前に見直せるところがいくつかあります。次の7つを上から順に確認すると、補償の水準を保ったまま保険料を下げられることがあります。
| 方法 | 内容と目安 | 注意すること |
|---|---|---|
| 1. 建物の情報を確かめる | 築年月・構造・延床面積・戸数・エレベーターの数が、契約と実際で合っているか確かめる。特に築年月の誤りは保険料に大きく影響し、払い過ぎた保険料が戻ることもある | 誤りがあれば、今の代理店か保険会社に訂正を依頼する |
| 2. 評価額(再取得価額)を適正にする | 建物を建て直すのにかかる金額(評価額)を確かめる。同じ保険金額8億円でも、評価額が10億円か8億円かで、5年間の保険料が約5.8万円違った例がある | 下げすぎると、事故のときに適正な補償を受けられない |
| 3. 保険金額を見直す | 評価額のうち、どこまでを保険でまかなうか(付保割合)を決める。評価額8億円で保険金額を4億8,000万円(約60%)にすると、5年間で約50万円安くなった例がある | 大きな事故で不足が出ると、修繕積立金から出すことになる |
| 4. 補償内容を見直す | 水災・破損・電気的事故などの補償が必要か、ハザードマップや設備の保証期間で確かめる | 水漏れに備える施設賠償・個人賠償は外さない |
| 5. 免責金額を設定する | 少額の修理は修繕積立金などで対応すると決める。0円〜30万円で設定できる商品が多く、5年300万円の保険料で、免責1万円なら約3万円、10万円なら約30万円安くなった例がある | 事故のたびに自己負担が出る |
| 6. 5年契約にする | 1年ごとの更新から、5年の契約にする。保険会社によって違うが、5年契約のほうが12〜14%割安になる | 一度に払う金額が大きくなる |
| 7. ほかの代理店で見積もりを取る | 今の管理会社・代理店以外で、同じ条件で複数の保険会社の見積もりを取る。前の章の事例では、同じ補償条件で1.2〜2.4倍の差があった | 条件をそろえないと比べられない |
水漏れが多いマンションで施設賠償や個人賠償を外すと、事故のときに管理組合や居住者の負担が大きくなります。賠償の補償は、保険料を下げる手段としては最後に考えるのが安全です。
保険金額と付保割合の考え方は付保割合の解説、風災補償を外せるかはマンション総合保険の風災補償で説明しています。
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管理組合の保険を比べて見直す手順
保険の見直しは、理事会での検討や総会の日程を考えると時間がかかります。満期の6か月前を目安に始めると、余裕をもって進められます。
- 確認今の保険証券と、過去の事故の記録をそろえる。満期日と補償の内容を確かめる
- 更新管理会社や今の代理店に、更新後の保険料の見積もりを早めに出してもらう
- 比較同じ条件で、ほかの保険会社の見積もりも取る。補償の違いを一覧にする
- 理事会保険料と補償の違い、見直しの理由を理事会で話し合い、案を決める
- 総会保険会社や補償を切り替える案を総会の議案にし、決議を得る
- 契約満期までに新しい契約の手続きを終え、管理会社と事故の連絡先を共有する
保険の契約者は管理組合なので、管理会社を通して入っている保険でも、代理店や保険会社を選び直すことができます。事故のときの応急対応や修理の手配は管理委託契約にもとづく業務なので、代理店を変えても管理会社の対応は通常変わりません。
保険の切り替えには総会の決議が必要です。保険料は管理費や収支予算にかかわるため、総会の日程から逆算して準備を始めます。2026年4月施行の改正区分所有法で決議の要件が見直された点もふくめ、マンション総合保険の更新と総会決議で詳しく説明しています。
改正の全体像と、総会・修繕・保険の実務への影響は「区分所有法改正(2026年4月施行)で管理組合は何が変わる?」で解説しています。
よくある質問
マンション管理組合の保険のまとめ
管理組合の保険は、共用部分の火災保険を中心に、施設賠償・個人賠償・役員賠償・地震保険を組み合わせて考えます。マンションの事故は水漏れが多く、賠償の補償と原因調査の費用がそろっているかが大切です。
保険料は保険会社によって大きく違うことがあります。満期の6か月前を目安に、今の契約を確かめ、7つの方法と同じ条件での見積もりの比較を進めると、補償を削らずに保険料を下げられることがあります。
代理店の現場から(監修者コメント)
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参考資料
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」(令和7年改正) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001995700.pdf
- 総務省消防庁「防災・危機管理eカレッジ 損害保険の種類 地震保険(2)」 https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/cat65/cat63/cat41/3-14.html
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」 https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/
- 最高裁判所第一小法廷 令和8年1月22日判決(令和6年(受)第385号 損害賠償等請求事件)
- 当社で扱った火災保険の事故の集計(2011年〜2026年10月、マンションに関するもの)
この記事は保険の一般的なしくみを説明するもので、特定の保険商品の内容を説明するものではありません。補償の内容や支払いの条件は、商品や契約によって違います。実際の契約内容は、保険証券や重要事項説明書でご確認ください。
当社で扱ったマンションの事故は、半分以上が水漏れです。原因が共用部分か住戸かで使う保険が変わるため、施設賠償と個人賠償、原因調査の費用をセットで確認しておくことをおすすめします。一方で、管理会社から届いた更新案をそのまま承認している管理組合は少なくありません。同じ補償の条件で今の契約と比べると、保険料が1.5倍以上違うことはよくあり、2〜3倍違うこともあります。補償を削る前に、まず同じ条件で比べてみてください。