マンションの漏水は誰の責任?管理組合の保険で備える3つの特約と事故対応の流れ

監修横田 正則株式会社キューブコンサルティング 代表取締役/損害保険トータルプランナー・AFP
この記事は2026年10月時点の情報にもとづいています(最終更新:2026年10月)。
マンションの漏水は、水が漏れた配管が「共用部分」か「専有部分」かで、責任を負う人と使う保険が変わります。共用部分が原因なら管理組合、住戸の中の配管が原因ならその住戸の区分所有者や居住者の責任になるのが原則です。
この記事では、管理組合の理事の方に向けて、漏水の責任の分かれ方、管理組合の保険で備えておきたい3つの特約、事故が起きたときの対応の流れを順番に説明します。
- 共用部分の欠陥(瑕疵)による漏水は、原則として管理組合が賠償責任を負うと最高裁が判断(2026年1月)
- 管理組合の保険で備えたいのは「施設賠償」「個人賠償(包括)」「水漏れ原因調査費用」の3つ
- 賠償の保険は時価を基準に算定されることが多い。足りない分は被害者自身の火災保険(水濡れ補償)で補える場合がある
- 古くなった配管そのものの交換費用は、通常、保険の対象にならない
マンションの漏水は誰の責任?共用部分と専有部分の分かれ目
漏水の責任は、水が漏れた場所ではなく、原因になった配管がどちらに属するかで決まります。どこまでが共用部分かは各マンションの管理規約で決まりますが、国土交通省のマンション標準管理規約では、配管について次のように区分しています。
| 配管 | 共用部分(管理組合) | 専有部分(各住戸) |
|---|---|---|
| 給水管 | 本管から各住戸のメーターまで(メーターを含む) | メーターより先の住戸内の配管 |
| 排水管(雑排水・汚水) | 立て管と、立て管につながる配管継手 | 継手より先の住戸内の配管(規約や配管の位置によって扱いが変わることがあります) |
- 共用部分の配管が原因:管理組合が被害者に賠償する
- 住戸内の配管や使い方(お風呂のあふれ、洗濯機のホース外れなど)が原因:その住戸の区分所有者や居住者が賠償する
- 屋上や外壁からの雨水の浸入:屋上・外壁は共用部分のため、原則として管理組合の責任。なお、雨水の浸入による被害は、各住戸の火災保険の「水濡れ」の補償の対象外となるのが一般的です
共用部分の欠陥による漏水は管理組合が賠償責任を負うと最高裁が初判断
2026年1月22日、最高裁判所は、外壁や床スラブの亀裂など共用部分の欠陥(瑕疵)から住戸に漏水被害が出た事案で、共用部分を管理している管理組合は、特段の事情がない限り民法717条の「占有者」にあたり、損害賠償の責任を負うと初めて判断しました(審理は東京高裁に差し戻し)。これまで高等裁判所では管理組合の責任を否定した判断もあったため、被害を受けた区分所有者が管理組合に賠償を求めやすくなり、管理組合にとっては賠償の保険の重要性が高まりました。判決の内容は「マンション共用部の漏水で最高裁が初判断」で詳しく解説しています。
管理組合の保険で漏水に備える3つの特約
共用部分の火災保険(マンション総合保険)には、漏水に備える特約があります。名前は保険会社によって違いますが、役割は次の3つです。
特約(呼び方の例) | 使う場面 | 支払われるもの |
|---|---|---|
施設賠償責任(建物管理賠償責任) | 共用部分の配管の破損などで、住戸や他人に損害を与えた | 管理組合が負う法律上の損害賠償金 |
個人賠償責任(包括契約・居住者包括賠償) | 住戸の配管や使い方が原因で、居住者が下の階などに損害を与えた | 居住者が負う法律上の損害賠償金(対象の居住者の範囲は契約による) |
水漏れ原因調査費用 | どこから漏れているか分からない | 漏水の原因を調べる費用(上限は契約による) |
施設賠償責任:共用部分の配管が原因のとき
共用部分の給水管や排水の立て管が壊れて、下の住戸の天井や家財が水浸しになった場合、管理組合は被害者に賠償する責任を負います。このとき使うのが施設賠償責任の特約です。マンション向けの施設賠償では、給排水設備からの漏水による損害も対象になるのが一般的ですが、対象かどうかは保険証券で確認してください。外壁のタイルが落ちて通行人や車に損害を与えた場合なども対象になります。詳しくは「施設賠償責任補償」をご覧ください。
個人賠償責任(包括):住戸からの漏水で、加害者が保険に入っていないとき
上の階の住戸の配管やお風呂のあふれが原因の場合、賠償するのはその住戸の人です。ただ、本人が個人賠償責任保険に入っていないと、被害者との話し合いがこじれがちです。管理組合の保険に個人賠償責任の包括契約を付けておけば、区分所有者とその家族など、契約で決めた居住者がまとめて対象になるため(賃借人を含むかは契約によります)、個人で入っていない人がいても保険で解決できます。漏水のトラブルが住民同士の対立になるのを防ぐ意味でも、付けておく価値のある特約です。詳しくは「マンション総合保険の個人賠償責任保険」をご覧ください。
水漏れ原因調査費用:どこから漏れているか分からないとき
配管は床下や壁の中を通っているため、調べないと共用部分か専有部分か分かりません。原因が分からないと責任も決まらず、どの保険を使うかも決められません。水漏れ原因調査費用の特約があれば、漏水事故が起きたときに業者に原因を調べてもらう費用を保険でまかなえます。支払いの条件と上限は保険会社や契約によって違うため、保険証券で確認しておきましょう。
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賠償の保険は「時価」が基準。足りない分は被害者の火災保険で補う
施設賠償や個人賠償は、法律上の損害賠償責任を補償する保険です。損害賠償の額は壊れた物の時価(使った年数に応じて価値を差し引いた額)を基準に算定されることが多く、築年数が古いマンションほど、賠償金だけでは修理や買い替えの費用に届かないことがあります。
この差を埋めるのが、被害を受けた住戸の人が自分で入っている火災保険の「水濡れ」の補償です(給排水設備の事故やほかの住戸からの漏水が対象で、雨水の浸入は対象外となるのが一般的です)。契約が新価(再調達価額)の場合は、同じ物を新しく買い直す費用を基準に支払われます。管理組合としては、総会や広報で各住戸の火災保険に水濡れの補償と個人賠償が付いているか確認するよう呼びかけておくと、事故が起きたときの解決が早くなります。住戸の側から見た補償の範囲は「マンションの水漏れは火災保険で補償される?」で解説しています。
古くなった配管からの漏水は保険の対象?
配管の老朽化が原因の漏水でも、漏れた水で生じた被害(下の階の天井・床・家財など)は、賠償の保険や被害者の火災保険の対象になります。一方、古くなった配管そのものの修理・交換費用は、通常、保険では支払われず、所有者(共用部分なら管理組合、専有部分なら区分所有者)の負担です。
業者に見積もりを頼むときは、「漏水で傷んだ部屋の修理」と「配管自体の修理」を分けてもらうと、保険の請求がスムーズです。築年数が進んだマンションでは、配管の更新を長期修繕計画に入れておくことが、漏水事故と保険料の上昇の両方を抑える近道です。
漏水事故が起きたときの管理組合の対応の流れ
- 被害の拡大を止める:止水し、上の階の住戸の協力を得て水の出どころを確かめる
- 記録を残す:被害の写真(全体と近く)、発生日時、状況をメモする
- 管理会社と保険の代理店に連絡する:事故の受付と、使える特約の確認
- 原因を調べる:水漏れ原因調査費用の特約が使えるか確認してから業者に依頼
- 責任と使う保険を決める:共用部分なら施設賠償、住戸なら加害者の個人賠償(または管理組合の包括契約)、足りない分は被害者の火災保険
- 見積もりをとって保険金を請求する:部屋の修理と配管の修理は見積もりを分ける
なお、2026年4月施行の改正区分所有法で、区分所有者が自分の住戸を守るために、ほかの区分所有者に専有部分の保存を求められることが明確になりました。空き住戸からの漏水が繰り返される場合などは、裁判所が管理人を選ぶ新しい制度(管理不全専有部分管理命令など)も使えます。詳しくは「区分所有法改正で管理組合は何が変わる?」をご覧ください。
マンションの漏水と保険 よくある質問
まとめ
マンションの漏水は、原因の配管が共用部分なら管理組合、住戸の中なら区分所有者や居住者の責任になるのが原則です。管理組合は、施設賠償・個人賠償(包括)・水漏れ原因調査費用の3つの特約で備え、各住戸には火災保険の水濡れの補償を確認してもらうと、事故が起きても早く解決できます。漏水に備える特約を含め、管理組合が入る保険の全体と見直しの手順は「マンション管理組合の保険」で解説しています。
代理店の現場から(監修者コメント)
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参考資料
- 国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」別表第2
- 最高裁判所 令和6年(受)第385号 損害賠償等請求事件 令和8年1月22日 第一小法廷判決
- 民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
- 法務省民事局「区分所有法・被災区分所有法の改正について」(2026年4月)
当社で扱ったマンションの事故は、半分以上が水漏れです。原因が共用部分か住戸かで使う保険が変わるため、施設賠償と個人賠償、原因調査の費用をセットで確認しておくことをおすすめします。保険料を下げるために特約を外す前に、漏水が起きたときに誰が困るかを理事会で一度話し合ってみてください。