大家さん・賃貸オーナー向けの火災保険徹底解説!賃貸経営必勝法とは

大家さんが賃貸経営をするには、さまざまなリスクがあります。

特に火災は、建物の損害だけでなく、復旧期間中の賃貸収入の減少という経済的に大きな問題を引き起こします。
総務省消防庁のデータによると、年間に発生する火災件数は3万8000件以上にも上っています。

また、火災以外にも台風や地震などの自然災害による被害、設備破損や、建物の老朽化による賠償事故なども考慮しなければなりません。

こうしたリスクを軽減するために、火災保険に加入することが非常に重要です。
この記事では、大家さんが直面するリスクと火災保険の必要性、そして保険料を抑えながら適切な保険を選ぶ方法について解説します。

目次

大家さんのリスク

建物の火災リスク

建物の火災リスクは、賃貸物件を所有する大家さんにとって非常に大きな問題です。火災が発生すると、建物の一部または全部が焼失する可能性があり、修復や再建に多額の費用がかかります。さらに、火災による損害は賃貸収入の減少や、入居者の生活に大きな影響を及ぼします。

火災の原因としては、調理中の火の不始末や、電気設備の故障タバコの不始末などが挙げられます。特に古い建物では、電気配線の劣化やガス設備の老朽化が火災リスクを高めます。また、木造建築は燃えやすく、一度火災が発生すると被害が拡大しやすいです。このようなリスクを考慮すると、大家さんは火災保険に加入するだけでなく、火災予防の対策も徹底する必要があります。

具体的な対策としては、定期的な消防設備の点検や、入居者への防火教育、火災報知器やスプリンクラーの設置が効果的です。

自然災害リスク

台風は毎年日本を襲う自然災害の一つで、特に沿岸部ではその影響が大きいです。
台風による強風や大雨は、建物に多大な被害を与える可能性があります。
例えば、強風によって屋根や窓が破損し、室内に雨水が侵入することで、建物内部が水浸しになることがあります。
また、大雨による洪水や土砂崩れは、建物の基礎部分に重大な損傷を与えたり、物件全体を使用不能にする可能性があります。

国土交通省 令和元年水害統計調査「都道府県別水害被害額図」
国土交通省 令和元年水害統計調査「都道府県別水害被害額図」

2019年の台風19号(令和元年東日本台風)は、過去最強クラスの台風といわれ、日本各地に甚大な被害をもたらしました。
国土交通省によると、この台風による被害総額は約1兆8,600億円に上り、多くの賃貸物件もその影響を受けました。台風のリスクを軽減するためには、事前に防災対策を講じることが重要です。例えば、屋根や窓の強化、排水設備の点検、土砂崩れの危険があるかハザードマップで確認することなどが挙げられます。

過去の台風被害

1. 2019年 台風19号(令和元年東日本台風)

支払保険金額 約5,826億円   日本損害保険協会より

2019年10月に日本に上陸した台風19号(令和元年東日本台風)は、関東から東北にかけて広範囲にわたって甚大な被害をもたらしました。記録的な豪雨による河川の氾濫や土砂崩れが多発し、多くの住宅やインフラが損壊しました。

2. 2019年 台風15号(令和元年房総半島台風)

支払保険金額 約4,656億円  日本損害保険協会より

2019年9月に日本に上陸した台風15号は、関東地方を直撃し、特に千葉県に甚大な被害をもたらしました。各地で建物の損壊や広範囲にわたる停電が発生し、停電は数週間に及び、多くの家庭が影響を受けました。

3. 2018年 台風21号

支払保険金額 約1兆142億円   日本損害保険協会より

2018年9月に日本に上陸した台風21号は、関西地方を中心に大きな被害をもたらしました。強風による建物の損壊や、高潮による浸水被害が多数発生し、特に関西国際空港が浸水したことが話題となりました。

地震リスク

地震は日本で頻繁に発生する自然災害です。地震による建物の倒壊や損傷は、賃貸物件に甚大な被害をもたらします。例えば、2011年の東日本大震災では、多くの建物が倒壊し、賃貸物件も多数の被害を受けました。この地震の影響で、多くの入居者が住む場所を失い、大家さんも大きな経済的損失を被りました。

建物の倒壊や大規模な損傷により修復費用が発生し、ガス管や水道管の破裂、電気設備の故障といった問題も引き起こされます。これらの被害は、修復に多額の費用がかかるだけでなく、修理期間中は物件の賃貸ができないため、家賃収入の減少にもつながります。例えば、建物全体が使用不可能になると、その期間中の家賃収入はゼロになり、大家さんの収入源が断たれることになります。

1. 2011年 東日本大震災

被害額 約16兆9000億円 内閣府「防災情報のページ」より

東日本大震災は、2011年3月11日に発生し、巨大な地震とそれに伴う津波が広範囲にわたって甚大な被害をもたらしました。津波による建物の倒壊、火災、インフラの破壊などが発生し、特に福島第一原子力発電所の事故が大きな影響を与えました。

2. 1995年 阪神淡路大震災

被害額 約9兆6000億円 内閣府「防災情報のページ」より

阪神淡路大震災は、1995年1月17日に発生し、兵庫県を中心に甚大な被害をもたらしました。特に神戸市では建物の倒壊や火災が多数発生し、多くの人命が失われました。被害は住宅やインフラだけでなく、経済活動にも大きな影響を与えました。

3. 2016年 熊本地震

被害額 約4兆6000億円 内閣府「防災情報のページ」より

熊本地震は、2016年4月14日と16日に相次いで発生し、熊本県および大分県に甚大な被害をもたらしました。特に熊本城や阿蘇神社などの歴史的建造物が被害を受け、また、多くの住宅やインフラが損壊しました。

大家さんの賠償リスク

大家さんが賃貸物経営をする際には、さまざまな賠償リスクが存在します。これらのリスクは、第三者に対して損害を与えた場合や、入居者が被害を受けた場合に発生します。具体的な例としては、以下のような状況が考えられます。

建物や設備の不備による事故

賃貸物件の老朽化や設備の不備が原因で、入居者や訪問者が怪我をしたり、財産に損害を与えたりするケースがあります。例えば、階段の手すりが壊れていたために転倒事故が発生した場合や、給湯器の故障によって火災が発生し入居者がケガをした場合などです。

給排水管の老朽化による事故

賃貸物件の給排水管が老朽化していると、漏水や破裂などの事故が発生する可能性があります。
例えば、老朽化した排水管が破裂して下階の住居が水浸しになり、入居者の家財に損害を与えた場合、大家さんが賠償責任を負うことになります。特にマンションなどの集合住宅では、上階からの漏水が複数の住戸に被害を及ぼすため、損害が広範囲に及ぶ可能性があります。

大家さんの火災保険の選び方

大家さんが賃貸経営で安定的に利益を出すためには、大きな損害に対して優先的に補償を用意することが大切です。
火災や台風などの自然災害、地震、給排水管の破損による賠償事故などは、賃貸経営に甚大な影響を及ぼします。

大家さんが優先的に検討する必要のある補償を5つご紹介します。

火災補償

マンション総合保険 - 火災

火災保険は、火災による建物の損害を補償する保険です。火災は建物全体を焼失させる可能性があり、修復費用は非常に高額になります。また、火災が発生した場合、賃貸物件では入居者が退去することになり、家賃収入の減少が見込まれます。家賃補償特約を付帯することで、これらのリスクをカバーし、建物の修復費用および家賃収入の減少を補償します。

風災補償

風災・ひょう災・雪災

台風や強風による建物の損害を補償します。強風によって屋根や窓が破損することがあります。例えば、台風によって飛来物が窓を破壊した場合、その修理費用が保険でカバーされます。また、屋根が飛ばされるなどの重大な損害が発生した場合も同様です​​。

水災補償

マンション総合保険 - 水災

洪水や土砂災害による損害を補償します。特に河川の近くや低地にある物件では、浸水による大規模な損害が発生するリスクが高いため、水災保険は非常に重要です。例えば、大雨によって河川が氾濫し、建物が浸水した場合、その修理費用が保険でカバーされます​​。
ハザードマップを活用して、水災リスクが発生しやすい地域か確認しましょう。

地震保険

地震

地震による建物の損害を補償します。日本は地震が頻発する地域であり、地震による建物の倒壊や損傷に対して備えることが不可欠です。例えば、地震で建物の基礎部分が損傷した場合、その修理費用が保険から支払われます。また、家財が損壊した場合も同様に補償されます​​。

地震保険金の支払われ方

木造建物の場合、主要構造部(基礎、屋根、柱、外壁)の損害割合によって地震保険金が決定されます。
一方、鉄骨や鉄筋コンクリートの建物の場合、建物の沈下または傾斜によって損害割合が決定されます。

損害の程度損害割合支払保険金
全損50%以上保険金額の100%
大半損40%以上50%未満保険金額の60%
小半損20%以上40%未満保険金額の30%
一部損3%以上20%未満保険金額の5%

賠償責任保険

施設賠償責任保険は、大家さんが賃貸物件を運営する上で発生するさまざまな賠償リスクに対処するための重要な保険です。保険会社によっては建物管理賠償責任保険と呼ばれることもありますが同じ補償内容です。

施設賠償責任保険では、以下のような事故を補償することができます。

朽化や設備の不備による怪我 建物や設備のメンテナンス不足が原因で、入居者や訪問者が怪我をしてしまった場合。

漏水事故 老朽化した給排水管が原因で水漏れが発生し、下の階の入居者の家財に被害を与えた場合。

ここで注意しなければいけないのは、個人賠償責任保険では補償ができないということです。

自動車保険の特約などで付帯することもある保険ですが、個人賠償責任保険では、業務遂行に起因する賠償責任は補償の対象外となります。賃貸収入を得る目的でマンションを所有し、第三者に貸し出している場合は補償対象外となります。

必ず個人賠償責任保険ではなく、施設賠償責任保険(建物管理賠償責任保険)を契約するようにしましょう

施設賠償責任保険には示談交渉サービスが付いていないため、被害者との交渉は大家さん自身が行う必要があります。保険会社によっては示談交渉サービスが付けられる保険会社もありますので、保険代理店や保険会社に確認してみましょう。

大家さんにオススメの特約

ここまで優先的に検討したい火災保険の補償内容を5つご紹介しました。
ここからは大家さんならではの補償を2つご紹介します。

家賃補償特約

火災や自然災害などで賃貸物件が使用不可能になった場合に、失われた家賃収入を補償する特約です。
例えば、火災で建物が修理中の場合、その期間中に受け取れない家賃収入を保険でカバーすることができます。
最大12ヶ月間の損失を補償している保険会社が多く、長期の収入減を保険でまかなうことができます。

家主費用特約

近年、高齢化社会の進展に伴い、65歳以上の一人暮らしの方が増加しています。その中で、誰にも看取られることなく最期を迎える孤独死の問題が注目されています。

賃貸住宅内で孤独死が発生すると、その後の借り手が見つからず家賃収入が減少することがあります。さらに、発見が遅れることで室内が損傷し、復旧に敷金以上の費用がかかることも少なくありません。このように、賃貸住宅オーナーにとって孤独死の問題は無視できないリスクとなっています。

また、孤独死以外にも、賃貸住宅内で自殺や犯罪死が発生した場合も同様のリスクが生じます。

家主費用特約では、賃貸住宅内で孤独死、自殺、犯罪死などが発生した場合に家主が負担する費用を補償します。具体的には、家賃の損失、原状回復費用、遺品整理等の費用が対象となります。

大家さんの火災保険 よくあるご質問

入居者が借家人賠償責任保険の補償を付保していれば、家主は建物に対し火災保険を契約する必要はありませんか?

入居者が契約する借家人賠償責任保険では、入居者の過失による火災は補償できますが、それ以外の下記の火災や自然災害は補償の対象となりません。

  • 隣近所からの類焼
  • 家主の失火
  • 漏電による火災
  • 自然災害(台風、洪水、地震など)
  • 第三者の行為による損害(車の飛び込みなど)
火災保険で賃貸物件の火災による損害はどのように補償されますか?

火災保険は、賃貸物件の火災による損害を補償します。

建物自体の修復費用だけでなく、解体・取り片付け費用、火災による家賃収入の減少も家賃補償特約を付けることで補償されます。

入居者が引き起こした火災による損害も補償されますか?

火災保険は、入居者が引き起こした火災による建物の損害も補償対象となります。

ただし、入居者の家財や個人的な損害については、入居者が加入する家財保険で補償することになります。

賃貸物件の漏水事故による賠償リスクは火災保険で補償されますか?

火災保険に施設賠償責任特約(建物管理賠償補償特約)を付けることで、賃貸物件の漏水事故による賠償リスクも補償されます。

給排水管から下階の入居者の家財に損害を与えた場合の賠償金を補償することができます。

自然災害で賃貸物件が被害を受けた場合の家賃収入減少は補償されますか?

家賃補償特約を付けることで、台風や水災など自然災害で賃貸物件が被害を受け、入居者が退去せざるを得なくなった場合の家賃収入減少も補償されます。

ただし、地震・噴火・津波に起因する損害は対象外となります。

まとめ

大家さんが賃貸経営をするには、火災や自然災害、設備の故障など、さまざまなリスクが伴います。
特に火災は建物の損害だけでなく、修復期間中の賃貸収入の減少という大きな経済的損失を引き起こします。
また、地震や台風による損害、老朽化による漏水事故なども考慮する必要があります。
これらのリスクに対応するために、火災保険に加えて、家賃補償特約や施設賠償責任特約などを活用することが重要です。

保険の見直しや適切な特約の追加を検討し、万が一の事態に備えることで、安心して賃貸経営を続けることができます。適切な保険に加入して、リスクを軽減し、安定した収益を確保しましょう。

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