付保割合とは?50%・70%・100%で変わる補償額と保険料をわかりやすく解説

監修横田 正則株式会社キューブコンサルティング 代表取締役
損害保険トータルプランナーAFP宅地建物取引士証券外務員1種
マンション管理組合で火災保険(マンション総合保険)を更新の際に、理事の方や管理組合員の方からよく耳にします。
保険料が高くなるので付保割合を下げましょう
と言われました。何のことだかさっぱりわかりませんでした。
付保割合って一体なに?
保険金額を下げても、いざ災害が起きたら本当に同じだけ補償されるの?
こんな提案を受けて戸惑った経験はありませんか?
付保割合とはざっくりこんなもの
- 付保割合とは、建物の評価額(再調達価額)に対して「何%を保険金額として設定するか」を示す割合です。
- 分譲マンションなどの専有部分の火災保険ではほとんど意識することはありませんが、マンション総合保険は保険料が大きくなるため、この割合の設定が保険料を左右します。
- 付保割合を安易に下げると、 大規模災害で全損判定になったときに自己負担が発生するリスクもあるので注意が必要です。
本記事では、マンション総合保険における「付保割合」の考え方と、
どのように設定すれば安全かつ適正な保険料にできるのか をわかりやすく解説します。
マンション総合保険の保険金額は建物の評価を見て決定する
マンション総合保険の付保割合とは、建物の評価額(再調達価額)に対して「何%を保険金額として設定するか」を示す割合です。
まずは保険金額の決定の仕方から見ていきましょう。
建物の評価額
もしマンションを今まったく同じ仕様で建て直したら、材料費・人件費などを全部合わせて総額いくらかかるか」その再建築に必要な金額を保険会社で簡易に評価した金額です。
いま再建する場合のコスト
過去に建てた当時の値段ではなく、現在の資材価格や人件費で計算します。
建築コストは年々上昇しているため、前回の契約で設定した評価額よりも、今回の更新時に算定する評価額のほうが高くなるのが普通です。
保険会社が建物の評価の際には、以下の項目を参考にしています。
建物の評価で保険会社がチェックするポイント
- 立地(どの地域に建っているものか)
- 建築年(いつ頃建てたか)
- 延床面積(どのくらい大きいものを建てたか)
- 主要構造部の材質(何を建材にして建てたか)
保険会社は、立地・築年数・構造などの情報から「1㎡あたりの再建築費単価」を算出し、それに延床面積を掛け算して建て直し総額(評価額)を出します。
例)
1㎡あたりの再建築費単価 20万円
延床面積 5,000㎡
20万円×5,000㎡=10億円
マンション共用部分の評価額
一戸建ての住宅や、アパートの場合には、1軒を1契約で考えるためシンプルです。
評価額(建て直し費用)=保険金額(保険の上限金額)でそのまま設定できます。
一方、マンションでは
各住戸の専有部分(玄関ドアから内側の部屋)
みんなで使う共用部分(エントランス、廊下、エレベーターなど)
が混在しています。どちらにいくらかかるかを正確に分けるのは現実的に難しいのがポイントです。
そこで保険会社は「共用部分割合」を設定しています。その割合は保険会社によって異なっています。
例)
保険会社の規定により、建物評価額の 40% を共用部分とみなす
建物全体の評価額 10億円の場合
共用部分の評価額:10億円 × 40% = 4億円
残り 6億円 は各住戸(専有部分)の分となります
実際の保険のかけ方
範囲 | だれが契約する? | 評価額のイメージ |
|---|---|---|
共用部分 | マンション管理組合 | 4億円 |
専有部分 | 各区分所有者 | 住戸ごとに設定し、合計すると6億円 |
共用部分 4億円 + 各専有の合計 6億円 = 建物評価額 10億円
こうして建物全体をすき間なくカバーする仕組みになっています。
評価額が間違っていると大変なことに
これまで「建て直しに必要な費用=評価額」についてお話ししてきましたが、火災保険ではそれとは別に、実際にどこまで補償するかを示す保険金額 という数字も存在します。
評価額 … いま同じ建物をそっくり建て直すのに必要な総額
建て直しに必要なお金の上限と覚えてください。
評価額は「受け取れる保険金」そのものではありません。ここを勘違いしないでください。
保険金額 … その評価額のうち、保険で実際にカバーしておく金額
火災が起きたときに保険会社が払ってくれる上限です。
保険を使用する事故が発生すると、保険会社はこの2つを再チェックします。
評価額よりも保険金額が大きい超過保険や評価額よりも保険金額が小さい一部保険 があると、保険契約上の不公平が生じるからです。
状態 | 何が問題? | イメージ例 |
|---|---|---|
超過保険(保険金額が評価額より高い) | 建物が全壊したとき、本来より多くのお金を請求できてしまう。「儲け目的」の契約を防ぐ必要がある。 | 評価額1億円なのに保険金額を1.5億円に設定した場合 |
一部保険(保険金額が評価額より低い) | 支払う保険料が不当に安くなる一方、いざというとき再建費用が足りない。支払いが減らされることがある。 | 評価額1億円なのに保険金額を5,000万円に設定した場合 |
評価額に合っていない保険金額を設定したり、そもそも評価額が間違っていたりすると、実際に請求したときに保険金が減額される恐れがあります。
そのため、契約や更新の際に建築年月・延床面積・構造など建物の基本データに誤りがないか必ず確認 してください。
マンション総合保険の付保割合の仕組み

付保割合は通常あまり使わないもの
戸建て住宅とマンションでは、火災保険をかけるときの考え方が少し違います。
戸建ての場合は、火災や地震で建物が丸ごと倒壊するリスクが比較的高いので、「建物をそっくり建て直すのに必要な金額(評価額)」をそのまま補償の上限(保険金額)に設定するのが一般的です。
要するに評価額=保険金額とする100%補償が標準というわけです。
一方、鉄筋コンクリート造のマンションは構造的に強いため、全壊するケースはまれです。
そこで登場するのが「約定付保割合」という仕組みです。
約定付保割合(やくじょうふほわりあい)
火災保険で、建物の評価額(再建築費用)のうち「保険が実際に補償する上限額」を何%にするか定めた比率。選べる範囲は保険会社や商品によって異なり(10%刻みで選ぶものが多い)、補償水準と保険料を調整するために用いられる。
約定付保割合を具体例でイメージ
評価額 | 約定付保割合 | 保険金額(補償上限) |
|---|---|---|
10億円 | 90% | 9億円 |
10億円 | 60% | 6億円 |
10億円 | 30% | 3億円 |
約定付保割合のポイント
・全壊しても、補償上限は約定付保割合で設定した保険金額まで。
・割合を下げるほど保険料は安くなるが、自己負担リスクが増える。
保険金額が下がってしまうのに、ちゃんと補償を受けられるのか?
保険金額が下がってしまうのに、ちゃんと補償を受けられるの?
「付保割合を下げて保険金額が減ると、いざという時にもらえる保険金も減ってしまうのでは?」と心配になるのは当然です。
ここで重要なのが、現在のマンション総合保険のほとんどが採用している「実損てん補(じっそんてんぽ)」という支払われ方です。
実損てん補
あらかじめ設定した保険金額(=共用部分評価額 × 約定付保割合)を上限として、実際に発生した損害額がそのまま支払われる方式
例えば、
評価額 1億円
約定付保割合 60%
保険金額 6,000万円
に設定した場合、1,000万円の損害が発生すれば、上限の範囲内なので(免責金額を除き)1,000万円が支払われます。「付保割合が60%だから1,000万円の60%=600万円」とはならないのです。
この仕組みがあるため、保険金額が実際の損害額を上回っている限り、自己負担なく修理が可能です。
ただし、問題となるのは「保険金額を上回る大規模な損害」が発生した場合です。
だからこそ、「私たちのマンションにとって、付保割合を何%に設定すれば安全か?」という議論が重要になるのです。
付保割合はどのくらいに設定すべきか
「結局、私たちのマンションでは付保割合を何%にすれば良いんでしょうか?」
これが最も知りたい点だと思います。
多くのマンションでは、全損という事態は極めて可能性が低いため、共用部分の評価額に対し、30%~60%の付保割合で契約されているのが実情です 。しかし、この数字を鵜呑みにするのは危険です。なぜなら、
マンションの評価額(規模)によって、同じ付保割合でもリスクの大きさが全く異なるからです。
具体的な例で比較してみましょう。
【ケース1】評価額20億円の大規模マンションの場合
約定付保割合:30%
保険金額(補償の上限額):6億円
この場合、補償の上限は6億円です。
一度の事故でこの金額を使い切るほどの損害は考えにくく、保険料を抑えるメリットを享受しやすいかもしれません。
【ケース2】評価額1億円の小・中規模マンションの場合
約定付保割合:30%
保険金額(補償の上限額):3,000万円
補償の上限は3,000万円です。
この金額は、決して小さい額ではありませんが、例えば「大型台風で屋上防水と複数戸の窓ガラスが破損し、広範囲で雨漏りが発生した」といったケースや、「給排水管の破裂で複数階にわたって水濡れ被害が及んだ」といったケースでは、一度の災害で保険を使い切ってしまう可能性が十分に考えられます。
もし上限の3,000万円を使い切ってしまったら、それ以上の修理費用はすべて管理組合の自己負担(修繕積立金からの持ち出し)となります。
このように、マンションの規模が小さいほど、低い付保割合はハイリスクになる傾向があります。
そのため、多くの専門家は、小規模のマンションの場合には、保険料と補償のバランスから「どんなに低くしても60%を下回るべきではない」と警鐘を鳴らしています 。
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約定付保割合の分だけ保険料も減るのか

「付保割合を下げると、保険料はどれくらい安くなるのか?」という点は保険料削減を検討している管理組合にとっては非常に重要です。
ここで注意したいのは、付保割合を半分にしても、保険料は半分にはならないという事実です。
実際には、付保割合を下げれば下げるほど、保険料の割引率は鈍くなり、補償額に対する保険料はかえって割高になります。
以下は、ある保険会社の付保割合ごとの保険料割引率の目安です。
| 約定付保割合 | 約定付保割合を100とした場合 |
|---|---|
| 100%(保険金額 10億円) | 100 |
| 80%(保険金額 8億円) | 89.1(10.9%減) |
| 60%(保険金額 6億円) | 86.2(13.8%減) |
| 40%(保険金額 4億円) | 85.6(14.4%減) |
| 20%(保険金額 2億円) | 81.2(18.8%減) |
この表が示す通り、付保割合を100%から60%に下げても(補償は40%減)、保険料は13.8%しか安くなりません。
さらに40%まで下げても(補償は60%減)、保険料は14.4%程度しか安くなりません。
つまり、約定付保割合を下げすぎてしまうと、割高な保険料を払っているのに補償額は低いという状態が生まれてしまうのです。
この「下げすぎると割高になる」という仕組みを理解した上で、保険料の削減メリットと失う補償のバランスを慎重に比較検討することが不可欠です。
保険料削減のためには、約定付保割合だけでなく、ハザードマップから補償の必要有無を検討する、免責金額を設定するなど、複数の施策を実施し、可能な限り補償は手厚く、保険料を割安にすることを目指しましょう。
付保割合50%・70%・100%で補償額と保険料はどう変わる?
付保割合を何%にするかで、補償の上限(保険金額)が変わります。共用部分の評価額が5億円のマンションを例に、50%・70%・100%を比べてみましょう。
付保割合 | 保険金額(補償の上限) | 損害2,000万円の場合 | 損害4億円の場合(大規模災害) | 保険料の目安(100%を100とした場合) |
|---|---|---|---|---|
100% | 5億円 | 全額補償 | 全額補償(自己負担0円) | 100 |
70% | 3億5,000万円 | 全額補償 | 3億5,000万円まで(自己負担5,000万円) | 約86〜89 |
50% | 2億5,000万円 | 全額補償 | 2億5,000万円まで(自己負担1億5,000万円) | 約86 |
この例では、2,000万円程度の損害なら、付保割合50%でも100%でも全額補償されます。差が出るのは、保険金額を超える大規模な損害が起きたときです。一方で保険料は、50%まで下げても100%と比べて約14%の減少にとどまる見込みです。
付保割合を決めるときは、①ハザードマップで想定される最大の損害、②修繕積立金の残高、③足りない分を一時金で集められるか、の3点を理事会で確認しておきましょう。
※保険料の目安は、前の表(ある保険会社、東京都・築35年・評価額10億円のケース)の80%・60%・40%の値から計算した参考値です。実際の保険料や保険金の支払い方は、保険会社・商品・建物の条件によって異なります。
付保割合のほかにも、補償を削らずに保険料を下げる方法があります。マンション管理組合の保険料を安くする7つの方法もあわせてご覧ください。
よくある質問
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まとめ
マンション火災保険の「付保割合」とは、建物の評価額に対し保険金額を何%に設定するかの割合です。
保険料削減のため割合を下げる提案もありますが、安易に下げると大規模災害時に自己負担が生じるリスクがあり、特に小規模マンションでは危険です。
付保割合を安易に引き下げることは、万一の大規模災害時に多額の自己負担を招き、大切な修繕積立金を取り崩す事態にも繋がりかねません。
しかし、保険料の削減方法は「付保割合を下げる」だけではありません。
私たちは、マンション管理組合の保険に精通したプロフェッショナルとして、皆様のマンションに最適な保険プランをご提案します。大切な資産を共に守るパートナーとして、ぜひ私たちにお声がけください。

