『共用部分』ってなに?マンション総合保険の対象となる共用部分の定義についてわかりやすく解説!

こんにちは。保険相談ラボ編集部です。

マンション管理組合の役員になると、「共用部分」という言葉は必ず耳にすると思います。

また、マンションの購入を検討している方やマンションにお住いの方も、一度は聞いたことがあるかもしれません。

でも、どこが共用部分なのかよくわからないですよね。
ましてや、共用部分にかける損害保険の内容となると、さらにわからないと思います。

マンションの共用部分に関するトラブルも数多く発生しています。

今回は、マンションの共用部分とはどこなのかと、共用部分にかける保険について解説します。

マンション共用部分にかける火災保険は、一般的にマンション総合保険といいますが、マンション総合保険の検討や契約、その管理などはマンション管理組合の大切な業務でもあります。

マンション管理組合の役員の方には、知っておいていただきたい内容なので、わかりやすく解説していきます。

目次

「マンション共用部分の火災保険」っていうけど、共用部分って結局どこ?

「マンション共用部分の火災保険」っていうけど、共用部分って結局どこ?

専有部分と共用部分

マンションの建物は、専有部分共用部分に分かれています。

分譲マンションの購入などによって個人が区分所有する部分を「専有部分」といいます。

簡単にいうと、「専有部分」とは戸室部分のことです。
それに対して、マンション建物の専有部分以外を「共用部分」といいます。

簡単にまとめると
専有部分は、戸室部分
共用部分は、戸室部分以外のほとんど
と、分けられます。

戸室部分以外のほとんどが共用部分と言われても、いまいちピンとこないですよね?
共用部分を具体的にあげてみましょう。

すぐに思い浮かぶのはマンションのエントランスや階段・踊り場、エレベーター、廊下等、住民のみなさんが使う部分です。

マンション建物に入ってから自分の戸室のドアに着くまでのところは、基本的に共用部分ということですね。

その他、建物外壁、界壁、構造柱、フェンス、駐輪場、駐車場、給排水管などがあります。
※専有部分にも給排水管があるので、注意が必要です。

また窓やサッシ、バルコニー(ベランダ)は居住空間にあるものと思われがちですが、個人所有の専有部分ではなくマンション建物の共用部分です。

ただし、共用部分であっても、窓やバルコニーは、通常使用に伴う管理は専用使用権を持つ者が行うことと定めされている事が多いので、通常使用の中で、窓ガラスが割れてしまったり、網戸が壊れてしまった場合は、区分所有者が修理代を負担しなければなりません。

基本的には、国土交通省が標準モデルとしているマンション標準管理規約に準じているマンションが多いですが、お住いのマンションの管理規約がどうなっているかチェックしてみましょう。

保険でいう建物の定義

マンション総合保険で補償の対象としているものは、マンション建物の本体の共用部分はもちろん、建物に直接付随しない付属建物や設備も補償の対象に含まれます。
さらに、共用部分に収容される区分所有者共有の動産も対象に含まれます。

少し専門的な用語が並んでしまったので、建物の定義から解説します。

一般的な火災保険でもそうですが、建物にくっついているものは、建物の一部とみなしています。
もう少し正確にいうと、建物に固定されているものは、建物の一部とみなします。

例えば、一般家庭で考えると、エアコンは建物に固定されているので、建物の一部です。
では、食洗機はどうでしょう?
キッチンの上に置いて使うタイプの食洗機は建物に含まれませんが、ビルトインの食洗機は建物の一部です。
冷蔵庫も同じように、通常の設置するだけの冷蔵庫は建物に含まれませんが、ビルトインの冷蔵庫は建物の一部です。

マンション総合保険で考えると、玄関ホールのエアコンや、廊下等の照明機器、階段の手摺など、建物に固定されているものは、建物の一部とみなします。
マンション建設時にはなく、後付のものでも建物の一部に含まれます。

例えば、マンション建設時にはついていなかったが、数年前に防犯カメラを各所に設置したような場合、その防犯カメラは建物の一部として補償の対象に含まれます。

広い定義をもつ共用部分

マンション建物の外にあるものでも共用部分とされるものがあったり、取り決めによって特定の場所(物)を共用部分とするなど、共用部分とされる範囲は実は幅広いんです。

まずはマンションの付属建物として共用部分とされるものを見ていきましょう

マンションとは離れた建物であっても、マンション建物と道がつながっていたり、そのマンションに従属する建物は専有部分に当たらなければ共用部分に該当します。

具体的には居住者が共同で使用する、マンション付属の物置やトイレがあればそれも共用部分に含まれます。

次に、マンション管理組合が定める管理規約によって共用部分とされる部分・付属の建物(規約共用部分)です。

マンションの専有部分に該当しない部分が共用部分とされるのは区分所有法という法律により定められており、法定共用部分といいます。

これに対して、たとえば管理人室や集会室などはマンションの一室を使うことが多いですが、もともとは専有部分とされるはずだった部分です。

管理業務のために利用するという目的をもって、管理組合の規約で定めることで共用部分として扱うことができるのです。
同様に駐車場も使用者が明確にわかるので、専有部分と見ることもできますが規約で共用部分と定められます。

また損害保険の補償対象としては、共用部分に保管・収容されている区分所有者共有の動産も含められます。
ロビーにあるソファやテーブル、集会室にあるホワイトボードやイス、テーブルなどが区分所有者共有の動産として、マンション総合保険の補償の対象に含まれます。

マンション総合保険は共用部分にかける火災保険ですが、補償の対象の範囲がかなり広いことがおわかりいただけたかと思います。

マンション総合保険では共用部分のどのようなことが補償されるのか

マンション総合保険では共用部分のどのようなことが補償されるのか

マンション総合保険により共用部分が補償される項目

マンション総合保険は、一般的にマンション管理組合が共用部分にかける火災保険です。

共用部分の火災保険では法定共用部分と規約共用部分まで含めた共用部分を補償の対象としています。
共用部分とは、戸室部分以外のマンション建物本体や付属の施設・設備等を指します。
ここまでで、マンション総合保険の対象の範囲が大きいことはわかったと思いますが、どんなことに対応しているのかを解説していきます。

マンション総合保険では、主に以下の事故に起因する損害の修理費用等を補償します。

  • 火災・落雷・破裂・爆発
  • 風災・雪災・雹災
  • 給排水設備の事故による水濡れ
  • 外部からの物体の衝突、落下等
  • 騒擾
  • 盗難
  • その他の破損・汚損

「あれっ!? 水災がない」と思った方はするどい!
一般的なマンション総合保険では、上記内容が基本補償で、水災はオプションで任意付帯というところが多いんです。

水災は、いわゆる洪水や土砂崩れによる損害を補償してくれるものです。

また上記の基本補償に付随する費用や、マンションで考えられる賠償責任リスク等を想定した特約が用意されています。
たとえば臨時費用の特約により修理費用の不足分を補ったり、住民同士のトラブルを解決するための個人賠償責任保険を付けることができます。

給排水管の老朽化による水漏れ、水濡れ損害もマンションにはつきものですが、共用部分の給排水管が原因で住民の戸室に損害を与えてしまった場合などには、オプションの『施設賠償責任補償(建物管理賠償責任補償)』が必要です。

地震保険もオプション扱いなので、地震保険がついていないと、地震に起因する損害はすべて対象外となります。
地震による延焼も対象外なので、注意が必要です。

基本補償や各種の特約の内容は保険会社によって違うところがあるので、比較の際はよく確認しましょう。

共用部分の保険金額の設定

火災保険をかけるときは、対象となる建物をもう一度建て直す場合の費用を考えて、保険の上限額を決めますが、その上限額を保険金額といいます。

通常、火災保険では建物の再建に必要な費用(評価額)を上限として保険金額を設定します。

マンション総合保険は共用部分の火災保険なので、保険金額も建物全体から専有部分を除いた共用部分の評価額で上限額を設定します。

その際にはマンションの専有部分と共用部分との境目をどこに定めているかによって、共用部分の評価額が変わります。
建物全体の評価額に対して、共用部分の保険金額は何割くらいあるのかということです。

一般的に専有・共用部分の境目については、マンション管理組合の管理規約により壁芯基準か上塗基準という設定がされています。

共用部分の金額を設定する際、たとえば壁芯基準なら建物の評価額の40%程度、上塗基準なら建物評価額の60%程度が目安になります。

専有部分については、区分所有者が個人で加入するので、建物全体の建て直し費用で評価額を設定するのは間違いなんです。
マンション総合保険は、あくまでも共用部分の保険なので、共用部分の評価額で設定するのが正しいんです。

共用部分と専有部分の境界線 -壁芯基準上塗基準

マンション専有部分の壁芯(へきしん)基準と上塗(うわぬり)基準について少しご説明しておきます。

両者の違いを簡単に説明すると、壁芯(壁真)基準とは床や天井、壁の中心に専有・共用部分の境目があり、上塗基準とは境目を床や天井、壁自体として内側を専有部分としています。

壁芯基準より上塗基準の方が共用部分の割合が大きくなるので、上塗基準を採用しているマンションの方がマンション総合保険で設定する保険金額は高くなります。

また国土交通省が管理規約の模範として発表しているマンション標準管理規約に書かれている影響もあり、全国のマンションでは上塗基準を採用しているところが多いです。

これに対して、不動産業の方が作るマンションの販売チラシにも基準の記載が入りますが、管理規約に関わらず壁芯基準を使って表記しているものが多いです。

保険の対象としては管理組合の規約に沿った契約になりますので、必ず管理規約にしたがって保険金額を設定されていることを確認してください。

保険金額を間違って設定していると、実際に被害が発生した際に保険金がしっかり支払われない可能性がありますので、注意が必要です。

マンション総合保険の保険料は共用部分のための管理費から支払われる

マンション総合保険の保険料は共用部分のための管理費から支払われる

マンションは分譲が始まってすぐに管理組合が結成され、管理組合によりマンション総合保険が手配されます。

管理組合としてマンション総合保険を契約したら、その保険料はマンション住民から集金し管理組合として支払います。

管理組合はマンション管理にかかる諸費用と一緒に、管理費として保険料を徴収します。

そのため修繕積立金のような計画的な集金と違い、リスクに備えるための集金ですから不足なく、またムダなく契約をする必要があります。

居住者の中には共用部分の保険契約があることや、保険料が徴収されているのを知らない方もいらっしゃるはずです。

管理業務のために支払ってもらうのですから、マンション居住者にもどのような管理運営がされているかしっかり理解してもらう必要がありますよね。

その中でも火災保険に関しては居住者個人の意見が組合役員の意見と相違する可能性が大いにありますので、それぞれのマンションに適合した保険を契約するために火災保険の内容をしっかりと理解することが必須だと思います。

マンション総合保険の更新も管理組合の総会決議に関わる事項です。

マンション総合保険で補償される共用部分についてのまとめ

マンション共用部分について解説しましたが、マンション総合保険を契約するにあたり、共用部分とはどの部分を指すのかや、保険の補償についてある程度知識を持っておいた方が安心です。

また、マンション総合保険は、マンションの資産価値に直結する重要なものだと考えています。

マンション管理を行う上でメンテナンスは非常に重要です。
保険会社によっては、マンションのドクターとも言える、マンション管理士によるメンテナスン状況などの診断を受けられるサービスを行っているところもあります。

マンション総合保険について基本的な部分を理解した上で保険契約に関わる話を聞き、比較検討することでよりムダ・ムラのない契約につながります。

管理組合の役人になった方は、ご自身の仕事を持ちながら、管理組合の業務にたずさわっている方がほどんどかと思います。
わからないこと、気になることがあれば、保険相談ラボにご連絡ください。

継続的な管理運営のために、ご参考になればと思います。

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