マンション総合保険の値上げの理由と対策法!どうしてこんなに高くなる?

こんにちは。保険相談センター編集部です。
弊社には、マンション管理組合様から悲鳴に近い形でご相談をいただくことも多いのですが、そのほとんどがマンション総合保険の保険料値上げ問題です。

まずはこちらをご覧ください。

マンション総合保険 更新時保険料の見積書

マンション管理組合の保険の更新が近くなると、マンション管理会社や保険代理店からこのような更新前と更新後の補償内容や保険料を比較した見積書が送られてくると思います。

こちらは、実際に弊社が管理組合の理事長様から相談を受けた際の見積書です。見積書そのものは掲載できないので、弊社で手直しして掲載しています。

右側が現在、そして左側が更新後の保険料となるのですが、なんと約2倍の保険料になっています。額にして約190万円の値上げです。

管理会社からこの見積書が届き、保険料が高すぎるので、困り果てた様子でご相談を受けました。

このような、保険料が高すぎるのではないかというご相談は非常に多く、マンション管理組合の理事長様は大変なご苦労をされているなと感じています。

そこで今回は、マンション総合保険の保険料はなぜ値上りしているのか、その対策法についてまとめています。

目次

マンション総合保険の保険料はなぜ値上げしたのか?

マンション総合保険の値上げはなぜ行われたのでしょうか?

そもそも、保険料はどのように決められているかをご覧いただきたいと思います。

マンション総合保険の保険料はどうやって決められているのか?

保険料は保険会社が自由に決めているようにも感じますが、実際には損害保険料率算出機構が純保険料率を、保険会社が付加保険料率を決め、保険料が決定されています。

損害保険料率算出機構

どの保険会社でもほぼ同じ純保険料率を使用することになるため、各保険会社の保険料の違いは、保険会社の人件費や広告宣伝費、経費など付加保険料の差となります。

火災保険の純保険料率と付加保険料率

インターネット契約ができる自動車保険や生命保険の保険料が安いのは、ネットを利用することで、経費である人件費を大幅にコストカットすることで実現しています。

2015年10月の火災保険料率の改定

この純保険料率は参考純率とも呼ばれますが、2014年に火災保険料率の改定がされました。

2014年6月25日 損害保険料率算出機構 火災保険参考純率改定のご案内

値上げの理由は2点で、参考純率としては平均3.5%の引き上げとなりました。

  • 台風・ひょう災・雪災の増加
  • 冬場の水道管凍結や給排水管の老朽化による水漏れ損害の増加

この2014年の損害保険料率算出機構の参考純率改定を受けて、2015年10月に各保険会社が火災保険料の改定を行っています。

2019年秋に予定される火災保険料率の改定

また、2018年に損害保険料率算出機構が再び、参考純率の改定を発表しました。

2018年5月21日 損害保険料率算出機構 火災保険参考純率改定のご案内

値上げの理由は前回と同様で、参考純率としては、前回を上まわる平均5.5%の引き上げとなりました。

保険料率引き上げの大きな原因としては、下記のような災害があったためです。

  • 2013年度の大規模な雪災(関東甲信に被害)
  • 2015年度の台風15号(九州に被害)
  • 冬場の水道管凍結や給排水管の老朽化による水漏れ損害の増加

風災・ひょう災・雪災による支払保険金の推移
この図のとおり、2013年の関東地方を中心とする雪災では、全保険会社で1,290億円という大きな被害が発生しました。この金額は保険金を支払った金額なので、実際にはもっと大きな被害があったと考えられます。

筆者の近隣の地域でも、雪の重みで自動車販売店の屋根が押しつぶされ、車が破損している光景や、某大手本屋さんの天井からいくつもの雨漏りが発生して、売り物の本を含めて水浸しになっているのを目の当たりにしました。

水漏れ損害による支払い保険金の推移
一方、漏水事故については年々右肩上がりで増えていることが分かります。水漏れだけで1年間に230億円もの保険金を支払っていると思うと、驚きです。

2018年の参考純率の改定を受けて、東京海上ホールディングスとMS&ADホールディングスは2019年秋に予定する火災保険料の値上げ幅を5.5%を上回る水準を検討していると発表しています。

余談ですが、2018年の記録的な台風被害は今回の参考純率改定には反映されていませんので、2020年以降さらなる保険料のさらなる引き上げが予想されます。

2019年秋に火災保険料が上がることは決定していますので、保険料の改定前に、現在の契約を一度解約し、改めて5年間の手続きをすることを検討している管理組合さんもいらっしゃるようです。
解約しても、解約返戻金が戻ってくるので、少しでもムダをはぶくためには、有効な方法となります。ここについてはあとで詳しくご紹介します。

築年数別料率の採用

現在のマンション管理組合の保険は、築年数別料率という考え方が採用されています。
築年数が経過すればするほど、保険料が高くなるという単純な仕組みになっています。

建築年数別の保険料比較

この表はある保険会社で補償内容を同条件のまま、築年数のみを変更した表です。
保険料は築年数5年刻みに異なっており、築年数30年以上で保険料が頭打ちとなる保険会社が多いようです。
築年数5年と比較すると、10年では約1.4倍、15年では約2倍、ここから急激に保険料は上がりはじめ、20年で2.7倍、25年で3.4倍、30年で驚愕の4倍の差があります。

築年数別料率は保険会社ごとに異なりますが、建物が古くなれば保険料が高くなるという感覚はイメージできると思います。

また保険会社によっては、築年数の古い物件というだけで、加入を断られるというケースもあります。

地震保険料率の改定

地震保険は火災保険とは異なり、どの保険会社で加入しても、同一の保険料となります。

地震保険の改定も、火災保険同様、頻繁に行われており、今年2019年1月にも改定があったので、ご存知の方も多いかも知れません。

地震保険は、2017年から3段階で値上げする予定で、1回目は2017年1月、2回目は2019年1月にあり、そして3回目は2021年1月の予定です。

地震保険料値上がりの推移

地震保険は必ずしも、保険料アップとなっている訳ではなく、地域によって、値上がりの地域と値下がりの地域があります。
こちらの表の通り、過去2回の保険料改定で、東京都では23%の値上げとなっていますが、愛知県では29%の値下げとなっています。

日本の地震発生リスク等地区分
出典:損害保険料率算出機構

この図は、地震発生リスクを地域によって区分したものですが、3等地の関東地方と四国地方を中心に保険料が上がっています。
関東地方では首都直下地震、東海・四国地方では、南海トラフ地震などが予想されているためと考えられます。

マンション総合保険の値上げ対策

火災保険料率の改定と、築年数別料率の採用で、更新時に数倍にも保険料が値上げとしまうケースが発生します。
それでは何か対策する方法はないのでしょうか?

根本的には補償を見直すという方法が重要なのですが、そのタイミングもかなり重要です。

マンション総合保険の補償の見直し

マンション総合保険の補償を見直す上では、以下の7点に注意して見直しを実行します。

  1. マンションの情報の確認
  2. 適正な再取得価額にする
  3. 複数の保険会社の見積りを取る(現在加入中以外の保険代理店からも取る)
  4. 補償金額を下げる
  5. 補償を限定する
  6. 免責金額(自己負担額)を上げる
  7. 保険期間を5年にする

こちらは別の機会に詳細をお伝えしますので、今回は簡単にご紹介します。

マンションの情報の確認

マンションの情報が誤っていると、保険料に影響することがあります。
特に建築年月は築年数別料率が影響するため、見積書の内容を確認し誤りがないか確認しましょう。

適正な再取得価額にする

再取得価額とは、同じ建物を建て直すために必要な金額という意味ですが、あくまで保険料を計算する上で使用します。
この再取得価額が無意味に高く設定されていることがあり、ムダな保険料を支払っているケースがあります。

複数の保険会社の見積りを取る(現在加入中以外の保険代理店からも取る)

複数の保険会社の見積もりは管理会社でも出してくれると思いますが、他の保険代理店からも見積書をもらうようにしましょう。
管理会社や保険代理店はまっとうな提案をすると思いますが、中には一般の方が保険のことを分からないことをいいことに、本来もっと良い商品があるにも関わらず、特定の保険会社の商品を安く見せかけるような見積書を作成しているケースがあります。
こういった場合、一般の方には判断できないことが多いので、他の保険代理店にも相談しましょう。

補償金額を下げる

補償金額(保険用語では保険金額といいます)を下げると保険料は安くなります。
しかし、補償される金額自体が少なくなってしまうため、下げすぎは厳禁です。

補償を限定する

ここは皆さんが目にする見積書に記載がある補償内容となります。
補償を限定することで保険料を安くすることができます。
水害の補償や地震保険などはハザードマップなどで地域のリスクを確認して判断しましょう。

免責金額(自己負担額)を上げる

自己負担額(保険用語では免責金額といいます)を設定することで、保険料を安くすることができます。
免責金額を上げすぎると、保険料は安くなるのですが、保険が使えない状態となり、何ために保険に加入しているのか分からないという状況を生みます。
バランス良く設定しましょう。

保険期間を5年にする

管理組合の予算が許すのであれば、1年ずつ更新するよりも、5年の長期契約の方が、5年分の保険料総額では12~14%保険料を安くできます。
ほとんどの保険会社で最長保険期間は5年とされているので、5年契約をオススメします。

マンション管理組合向けの保険の見直しはいつすべきか?

火災保険そして地震保険の今後の保険料改定時期は以下のタイミングです。
この時期に火災保険料は確実に値上げとなり、地震保険については、地域によって値上げする地域と値下がりする地域があります。
関東、東海、四国の場合には基本的に値上げです。

  • 火災保険 2019年秋(例年ではおそらく10月)
  • 地震保険 2021年1月

あくまで予定なので、変更の可能性もあります。
また保険会社によって、時期が多少ずれ込むこともありますので、保険会社の発表を確認してください。

ひとつの考え方として、2019年秋(例年ではおそらく10月)の火災保険料率改定前に、現在の保険契約を解約して、同日付で新たな5年間の保険契約に加入し直すという方法も取ることができます

火災保険料の改定前対策

解約した場合には、解約返戻金としてお金が管理組合に戻ってくるので、基本的には損失は生じないと思います。
解約返戻金がどのくらい戻ってくるのかは契約している保険会社にかならず確認して損失が発生することのないように注意して下さい。

そして、新たな保険契約については、現在担当している管理組合や保険代理店の保険会社の比較表だけで判断するのではなく、別の保険代理店からの見積書を取ることをオススメします。

マンション総合保険 値上げ まとめ

いかがでしょうか?
今回はマンション総合保険の値上げの理由とその対策をまとめました。2019年の10月前後に保険会社各社で火災保険の改定があるので、管理組合で検討を進める場合には、早めに対応を始めるようにして下さい。

そして変更する際に損失が発生しないかどうか、今までとは別の保険代理店でも見積書を取るということを忘れずに実行して下さい。

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