マンション総合保険の個人賠償責任保険について知っておくべき3つのこと

突然ですが、個人賠償責任保険という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

最近では県や市などの自治体によって、個人賠償責任保険の加入義務化も進んでいるため、聞いたことのある方も多いかもしれません。

例えば

自転車事故で人にケガをさせてしまった!

友達の引っ越しを手伝ったが、運んでいた家具をうっかり落として壊してしまった!


というような場合に発生する、他人のケガの治療費や他人のモノの修理費など他人とのお金の問題を解決するための保です。

とくに、マンションにお住まいの方にとっては、マンションの給排水管の漏水事故での保険使用が考えられるため、必要性の高い保険となります。

そんな重要な保険となる、個人賠償責任保険について、事故例や、マンション総合保険の特約として契約する個人賠償責任保険とはどのような保険か、そしてそのメリットについての3点を中心にご紹介します。

この記事を読んでいただければ、個人賠償責任保険のムダのない契約方法が理解できると思います。契約時の参考にしてください。

目次

個人賠償責任保険の補償対象となる事故

個人賠償責任保険の補償対象となる事故

第三者にケガをさせたり物を壊してしまった場合、法律上、加害者側には被害者のケガの治療費を負担したり、モノを元の状態にの修復(原状復旧といいます)する、法律上の責任があります。

民法 709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

一般的には、治療費や原状復旧のためのお金を加害者が被害者に支払うことで解決します。

このように、法律上の責任を負うことで、費用の負担が発生します。この費用を補償する保険が、個人賠償責任保険となります。

個人賠償責任保険の事故例 ~マンション編~

マンションで最も多い事故は、給排水管の漏水事故です。

マンションでの漏水事故例

  • 自室の洗濯機のホースが外れ、下の階に漏水し、階下の住人の衣類を汚してしまった。
  • 台所を掃除中に、配管を破損させてしまい、下の階に水漏れが発生、階下の壁紙を水浸しにしてしまった。
  • 区分所有者(専有部分)の給排水管の老朽化により水漏れが発生し、共用部分の電気設備が壊れてしまった。

どうしてこんなに高くなる!マンション総合保険の値上げの理由と対策法でもご紹介していますが、給排水管の老朽化による漏水事故が、非常に増えています。

マンション総合保険 水漏れ損害による支払保険金の推移

老朽化による漏水事故が多発し、保険金を多く支払っていることから、マンション総合保険の保険料の値上げということにつながっています。

個人賠償責任保険の事故例 ~日常生活編~

また、個人賠償責任保険で補償される事故は、マンションの漏水事故だけでなく、下記のようなものも挙げられます。

  • 自転車走行中に人をはねてケガをさせてしまい、ケガの治療代を請求された。
  • 子供が外で遊んでいたところ人の家のガラスを割ってしまい、窓を修理する修理代の請求が来た。
  • 友達の引越しの手伝っていたところ、運んでいた家具を落として壊してしまった。家具の購入費と傷ついた床の補修費を請求された。
  • お店の中を回っていたら、よそ見をしてしまい瓶入りのドレッシングにぶつかって落ちた。瓶が割れ、ドレッシングの商品代と、床の補修費用をお店から請求されてしまった。

日常生活の中でどんなに気をつけていても、0にすることはできません。
避けきれない賠償事故をお金の面で備えるのが個人賠償責任保険となります。

個人賠償責任保険の事故例 ~自転車事故編~

また、昨今では自転車保険の加入の義務化を進めている自治体もあり、個人賠償責任保険の普及が進んでいます。
自転車保険は、他人にケガをさせてり、モノを壊してしまった場合の個人賠償責任保険と、自分のケガを補償する傷害保険のセット商品になります。

自治体で義務化しているのは、自転車保険の一部となる、個人賠償責任保険になります。

義務化の流れとなった事故が神戸地裁判決です。

自転車事故

事故当時小学5年生だった子供が、マウンテンバイクに乗り、スイミングスクールから自宅へ帰宅していました。
その際に、道路を歩行していた、当時62才の女性に正面衝突し、重症を負わせ、後遺障が残りました。

賠償金 9,500万円

子供(責任無能力者)の責任を、その場にいなかった親が負うことになった、非常に高額な賠償事故という意味でも、当時、大変話題となりました。

またこの事例以外にも1億円近い賠償事故が、発生していることから、大学や自治体というレベルで、自転車保険の義務化を進めています。

自転車保険の義務化をすすめる 30自治体>

  • 宮城県
  • 秋田県
  • 山形県
  • 福島県
  • 栃木県
  • 群馬県
  • 埼玉県
  • 千葉県
  • 東京都
  • 神奈川県
  • 山梨県
  • 長野県
  • 新潟県
  • 静岡県
  • 岐阜県
  • 愛知県
  • 三重県
  • 福井県
  • 滋賀県
  • 京都府
  • 大阪府
  • 兵庫県
  • 奈良県
  • 香川県
  • 愛媛県
  • 福岡県
  • 熊本県
  • 大分県
  • 宮崎県
  • 鹿児島県

<努力義務として自転車保険を勧める 9自治体> 

これらの自治体では条例等で自転車の義務化を進めています。

これから義務化されるところも多くなると想定され、義務化の地域外から乗り入れた自転車についても保険加入義務の対象となります。

自転車に乗る方はどこで義務化されているか確認しておきましょう。

個人賠償責任保険の事故例 ~認知症の家族編~

最近の報道で、認知症患者が他人に損害を与えたら、家族が責任を負う
こんな話題を聞いたことのある方もいらっしゃるかと思います。

2007年、認知症患者の方が線路に立ち入り、列車にはねられてた事故が起きました。
JR東海は認知症患者の遺族に振替輸送費などの損害賠償請求を提起しました。
一審の名古屋地裁では、妻と長男合わせて720万円の賠償命令、二審の名古屋高裁では妻に360万円の賠償命令が下りました。

この判決は、民法714条にある、重い認知症患者など、責任能力のない人の賠償責任は監督義務者が負うと定められていることからの判断でした。

最高裁では、妻、長男共に監督義務者にあたらないことから、損害賠償責任はないと判決が下りました。

あくまでこのケースでは、監督義務者に当たらなかっただけで、生活状況や介護の実態などを総合的に考慮して判断すべきと、新しい基準が示されました。

この判決以降、監督義務者に当たる場合の賠償責任も補償できる、個人賠償責任保険が話題となりました。

マンション総合保険 保険料削減

マンション総合保険の特約として契約する個人賠償責任保険

個人賠償責任保険は2種類ある

個人賠償責任保険は、個人で自動車保険の特約、火災保険の特約、生命保険の特約として契約することが可能です。
一方で、マンション管理組合でマンション総合保険の特約として、マンション居住者全員を対象とする個人賠償責任保険を契約することもできます。

どちらでも個人賠償責任保険に加入することができるのですが、補償の対象者に違いがあります。

自動車保険の特約の個人賠償責任保険

補償の対象者のことを被保険者と呼びます。
このように、自動車保険の特約では、補償の対象(被保険者)を、契約者本人や親族を中心にしています。

被保険者

本人
本人の配偶者
本人またはその配偶者の同居の親族
本人またはその配偶者の別居の未婚の子

個人賠償責任保険

マンション総合保険の特約の個人賠償責任保険

被保険者

居住者
居住者の配偶者
居住者またはその配偶者の別居の親族
居住用戸室を所有・使用・管理している者で、居住用戸室に居住していない者

マンション総合保険の特約の個人賠償責任保険では、補償の対象(被保険者)を、居住者とすることで、所有して住んでいる方だけではなく、賃貸で住んでいる方、所有だけしている賃貸オーナーを含め補償できるようになっています。
マンション総合保険の特約では、区分所有者全員に保険をかけることになるので、マンションに住んでいる方は全員が補償の対象となります。

補償の対象者が幅広いことからも、マンション管理組合が契約者となる、マンション総合保険で個人賠償責任保険を契約する方法がオススメとなります。

個人賠償責任保険の保険金額はいくらに設定するべきか

個人賠償責任保険の補償金額はいくらに設定すれば良いのか分からないというご相談は以外に多いです。

自治体で加入を義務化しているところでも、補償額に関しては契約者の自由となっていますが、実際の賠償事故例を考えて万一に備えておくことが重要です。

  1. 1,000万円
  2. 3,000万円
  3. 5,000万円
  4. 1億円

だいたいこの4パターンのいずれかで契約していることが多いようですが、先程の自転車事故の例で言うと、9,500万円もの賠償金が発生しています。
これを踏まえると、1億円がベターではないかと個人的には思います。

また、1,000万円にした場合と、1億円にした場合で、保険料がそれほど変わらないことからも、1億円がオススメです。

個人賠償責任保険に免責金額は設定すべきか

ずばり不要です。免責金額0円で良いと思います。
ちなみに免責金額とは、自己負担額のことです。

免責金額5万円の事故例

修理費用 130万円
免責金額 5万円

個人賠償責任保険の保険金 125万円

免責金額を設定したところで、保険料はそれほど安くはなりません。

気になるようでしたら、免責金額を設定した場合と0円にした場合の保険料を出してもらいましょう。

マンション管理組合が契約する個人賠償責任保険のメリット

マンション管理組合が契約する個人賠償責任保険のメリット

居住者同士のトラブルを減らす

個人賠償責任保険は、マンション管理組合で契約することをオススメします。
全員が保険に加入することで、居住者同士のトラブルを減らすことができることが主な理由です。

多数の世帯が暮らしている共同住宅の中では、若い夫婦、単身の高齢者、外国人、マンションオーナーなど、様々な価値観を持った方がいます。

相手に与えた損害がどんなに小さなものでも、価値観の異なる方とトラブルになると、大きな問題に発展する可能性があります。

お金という観点から見ても、加害者として賠償請求される場合には急な出費の発生に困ります。
被害者側となり賠償請求する場合でも、相手が保険に加入しているか、相手がお金を支払えるかなどの心配があります。

マンション管理組合として、居住者全員が保険に入っていることを知っていれば、加害者であっても、被害者であってもお金の心配を極力少なくすることができます。

保険は金銭的な解決に限られますが、今後も同じマンションで暮らし続けることを考えると、保険でトラブルを解決できるのであれば、安心ですよね。

この安心感が、マンション管理組合を契約者として、個人賠償責任保険に居住者全員が加入する理由です。

またマンションの住民どうしで賠償事故があった場合に、困った住民が「なぜうちの管理組合は火災保険に賠償責任保険をつけていないのか」と不満をもつ可能性もあります。

やはりマンション総合保険に特約として個人賠償責任保険を包括付帯したほうが面倒がないようです。

補償の対象とならないこともあることに注意

他人に損害を与えた場合に補償される個人賠償責任保険ですが、保険金をお支払いできない場合という免責事項があります。

いくら相手から賠償請求されたとしても、わざとやったのであれば、保険は適用されず、その責任は自分で負わなくてはいけません。

またあくまでも他人に対する賠償事故問題を解決する保険ですので、家族間で起きた場合には補償されません。

保険約款やパンフレットに保険金をお支払いできない場合という項目があります。

保険金を支払いできない主な場合

保険契約者・被保険者の故意
被保険者と同居する親族に対する損害賠償責任
被保険者の業務遂行に直接起因する損害賠償責任
自動車の所有・使用・管理に起因する損害賠償責任
地震、噴火、またはこれらによる津波による損害

上記以外にも、離婚した相手から慰謝料を請求されたときなども他人にケガやモノの損壊がない場合も、補償の対象外となります。

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マンション総合保険の個人賠償責任保険について まとめ

いかがでしたでしょうか?
今回は、マンション総合保険の個人賠償責任保険について、まとめました。

マンションは共同住宅なので、周辺住民とトラブルを起こしてしまうと、その後、住みにくくなってしまいます。
特にマンションでは、漏水事故が右肩上がりで増えていて、マンションの老朽化とともに、その事故件数は増え続けています。

個人賠償責任保険をかけるだけで、トラブルを減らせるのであれば、必ず用意しておきたいですね。

また、マンション管理組合で居住者全員が対象となります。居住者全体の安心感を生むためにも、マンション管理組合が契約者となる個人賠償責任保険(包括契約用)に加入するようにしましょう。

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